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充満圧
収縮性を上げると、流量が増えるのか、充満圧が下がるのか――閉じた循環の作動点
低心拍出の患者に強心薬を始めたとき、心拍出量が期待ほど増えず、肺動脈楔入圧の低下の方が目立ったとしたら、薬は効いていないのだろうか。教科書のPVループでは、拡張末期容積を固定したまま収縮性を上げるとESVが減り、一回拍出量が増える。ところが体の中では拡張末期容積は固定されていない。収縮性を上げた心臓が行き着く先は、一回拍出量が増えた状態なのか、充満圧が下がった状態なのか。
弛緩指標は、心筋だけを測っているのか
左室圧が速く下がるようになり、等容弛緩時間IVRTも短くなった。心筋の弛緩が改善したと考えてよいだろうか。圧下降の速さ、IVRT、僧帽弁流入のE/Aや減速時間は、力が消える速さだけでなく、左室圧がどの高さから下がり始めるか、弁の向こうにどの左房圧があるか、流入を受け止める両心腔がどれだけ広がるかにも左右される。この回では、心筋側の設定を変えずに総血液量だけを変え、これらの指標が負荷によってどう動くかを確かめる。
拡張能と弛緩|記事と実験のガイド
充満圧が高いとき、何が起きているのか。治療後に圧が下がったとき、何が変わったのか。「拡張能」という一語には、心筋が力を抜く速さ、力が抜けた後の心室の広がりやすさ、血液が入ってくる条件、心室を外から押す圧、全身での血液の配分が重なっている。この連載では、モデルで操作できる条件を変える実験と、臨床研究や原著のデータを並べて読み、圧の変化をもう一度生理の言葉へ戻していく。
大きなv波は、強いMRを意味するか――左房の受け入れと押し出し
僧帽弁逆流(MR)を減らしたのに、左房のv波が高いまま残る。反対に、大きなMRがあってもv波が目立たない患者もいる。左房の圧波形は、流れ込んだ血液の量だけで決まるのだろうか。本稿では、左房圧の波の高さが、左房の容積の増え方、左房の受け入れやすさ、心房自身の収縮、そして左室・肺静脈との流れの組合せで決まることを、二つのモデル実験でたどる。読み終えたときに、同じ逆流量でも左房圧が違いうる理由と、心房の押し出しを強めても前方への充満が同じだけ増えるとは限らない理由を説明できるように
低血圧を逆に読む――同じ血圧の低下を、心臓・血管・血液量に分けて見分ける
平均血圧が70 mmHg台に下がった患者が4人いる。血圧だけを見れば同じだが、原因が違えば、次にすべきことも違う。欧州集中治療医学会のコンセンサスは、ショックを、流量が低い三つの型(循環血液量減少性・心原性・閉塞性)と、流量が保たれやすい血液分布異常性の、四つのパターンで考えるとし、原因が重なることも多いと述べている。診察で型がはっきりしなければ追加の評価を行い、まず心エコーを、複雑な例では肺動脈カテーテルなども用いることを提案している。
僧帽弁を広げると、左房圧と左室の圧はどう変わるか
僧帽弁狭窄を経皮的に解除すると、平均左房圧は下がったのに、左室拡張末期圧(LVEDP)は上がった。どちらも「充満圧」と呼ばれるので、同じ患者で充満圧が改善し、同時に悪化したように見える。しかし二つの値は、測っている心腔も、心周期の時点も違う。本稿の問いは、弁口が広がったとき左房と左室の圧がそれぞれどちらへ動くのか、そしてLVEDPの上昇は左室が硬くなった証拠なのか、である。読み終えたときに、平均左房圧とLVEDPが別々に動く理由、同じ受動圧–容積関係の上でも拡張末期の圧が上が
「拡張能が悪い」とは、何が悪いのか
息切れのある患者で左室拡張末期圧LVEDPが高く、治療後に下がった。これを「拡張能が改善した」とまとめてよいだろうか。心筋が速く力を抜けるようになったのか、心室が広がりやすくなったのか、それとも入っている血液量や、心室を外から押す圧が変わったのか。同じ圧の低下でも、どれが起きたかによって診療へ持ち帰る意味は異なる。
充満圧は前負荷か――Frank–Starling曲線を2つの軸で読む
中心静脈圧(CVP)や肺動脈楔入圧は、長く心室の前負荷の目安として使われてきた。Kumarらは、健康な志願者に3 Lの生理食塩水を3時間かけて投与し、楔入圧やCVPが、心室の拡張末期容積の指数とも、一回拍出量の指数とも相関しないこと、輸液による変化どうしも相関しないことを示した。一方、拡張末期容積の指数は一回拍出量の指数と相関していた。敗血症の患者でも、輸液前のCVPや楔入圧で輸液への反応を予測する力は低かった(ROC曲線下面積はいずれも0.6前後と
心拍数が増えれば心拍出量も増えるのか――収縮予備能と充満
心拍数が増え、一回拍出量SVが保たれれば、心拍出量COも増える。しかしSVは心拍数とともに変わるので、拍数だけからCOの変化は決められない。本稿では、収縮期の指標が上がってもSVが保たれなかった臨床研究から出発し、心拍数と心筋張力の設定を別々に変えて、拍数の利点がどこで相殺されるかを見る。
「心室が硬い」とは、どの曲線の傾きか
LVEDPが上がった。心室が硬くなったのだろうか。同じ心室に、より多くの血液が入っただけでも圧は上がる。圧が高いことと、心室の性質が変わったことを区別するには、圧の一点を容積と組にして、圧容積関係の曲線の上に置き直す必要がある。
拡張時間のために、心拍数は低いほどよいのか
拡張期が長ければ、左室はゆっくり弛緩し、十分に血液を受け入れられる。だとすれば、拡張機能が悪い患者ほど心拍数は低い方がよいのだろうか。一拍に使える時間だけを考えると自然な推論だが、循環が必要とするのは一分あたりの流量である。本稿では、一回拍出量(SV)、充満圧、心房と心室の時間関係を同時に追い、心拍数を上げると左房圧がかえって下がる場合があることを、臨床研究とモデル実験で確かめる。読み終えたときに、心拍数を変えたとき心拍出量と左房圧がどう動くかを、一回量、充満の終わりの容積、
二つの心臓を直列につなぐ――右房圧と左房圧が別々に動く理由
頸静脈の怒張や中心静脈圧(CVP)は、右心側の充満圧の目安である。臨床では、それを手がかりに左心側の充満圧、つまり肺うっ血の程度まで推し量ることが多い。Draznerらは、心移植の評価を受けた進行した慢性心不全1000例で、右房圧と楔入圧の相関係数が0.64であり、右房圧が10 mmHg以上なら楔入圧22 mmHg以上を88%の陽性的中率で示すことを報告した。一方、約2割の例では両者が食い違っていた。別の施設で、進行した心不全のため心移植の評価中
充満圧が下がったのは、心筋がよくなったからか
治療の後に左房圧やPCWPが下がった。肺循環にかかる圧の負担が減ったことは確かである。では、その低下は心筋の弛緩や受動特性がよくなった証拠になるだろうか。同じ圧は、血液の量、血液が血管のどこにどのような状態で収まっているか、静脈側の性質によっても変わる。
心膜の拘束を強めると、左室の圧は上がるのか
左室拡張末期圧LVEDPが高い。心筋が硬く、血液を受け入れにくいのだろうか。心室の内側の圧だけを見ていると、もう一つの可能性が抜け落ちる。心室を外側から押す圧が高ければ、心筋の性質が同じでも、高い内圧が記録され得る。では、心膜の拘束を強めれば、左室の圧はその分だけ上がるのだろうか。
充満圧を、容積・硬さ・弛緩・外圧から読む
左室充満圧は、血液を受け入れるときに必要となる圧を表す。左房から左室へ流れる血液は、拡張期の圧較差に沿って移動する。左室が硬くなると、同じ容積まで満たすために高い圧が必要になる。弛緩が遅れれば、流入を始める時刻と、充満に使える時間が変わる。
PV関係から、Starling曲線を導く
同じ収縮状態の心室では、充満が増えると一回拍出量も増える。Frank–Starlingの機序である。PV平面ではループの右端が右へ動き、駆出に使える容積が増えることに対応する。