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心拍出量
収縮性を高めれば患者は良くなるのか――拍出・仕事量・転帰
強心作用のある治療で心拍出量(CO)が増え、EFも上がった。患者は良くなると期待してよいだろうか。心不全治療の臨床試験は、この期待が外れうることを繰り返し示してきた。本稿では、収縮性を変える介入を三つの段階で評価する。どれだけ送り出したか(拍出量)、どの圧に向かってどれだけの仕事をしたか(圧と仕事量)、そして患者に何が起きたか(症状、入院、死亡)である。前の二つはモデルで機序として関係づけられるが、三つ目には症状や転帰を測った臨床研究による検証が必要である。
速く打つ心臓は、強く打つ心臓か――心拍数・充満・収縮性
運動や発熱で心拍数が上がると心拍出量が増える。ペースメーカーの設定を上げれば、低心拍出を改善できるように思える。一方で、HFpEFでは心拍数を上げても拍出が思うように増えないことが、侵襲的な研究で示されている。心拍数を上げることは、心臓を「強く」することなのか。
弁は圧の差を流れに変える――圧較差・流量・弁口面積
大動脈弁狭窄(AS)の重症度は、弁をはさむ平均圧較差(40 mmHg以上)、ジェットの最大流速(4 m/s以上)、弁口面積(1.0 cm²未満)を組にして判断する。ところが、面積からは重症なのに圧較差が小さい例は珍しくない。Hachichaらは、EFが保たれ、体表面積あたりの弁口面積から重症とされた512例のうち、35%で一回拍出量係数が35 mL/m²以下と低く、平均圧較差も低かった(32対40 mmHg)ことを報告した[@a2
低血圧を逆に読む――同じ血圧の低下を、心臓・血管・血液量に分けて見分ける
平均血圧が70 mmHg台に下がった患者が4人いる。血圧だけを見れば同じだが、原因が違えば、次にすべきことも違う。欧州集中治療医学会のコンセンサスは、ショックを、流量が低い三つの型(循環血液量減少性・心原性・閉塞性)と、流量が保たれやすい血液分布異常性の、四つのパターンで考えるとし、原因が重なることも多いと述べている。診察で型がはっきりしなければ追加の評価を行い、まず心エコーを、複雑な例では肺動脈カテーテルなども用いることを提案している。
心拍数が増えれば心拍出量も増えるのか――収縮予備能と充満
心拍数が増え、一回拍出量SVが保たれれば、心拍出量COも増える。しかしSVは心拍数とともに変わるので、拍数だけからCOの変化は決められない。本稿では、収縮期の指標が上がってもSVが保たれなかった臨床研究から出発し、心拍数と心筋張力の設定を別々に変えて、拍数の利点がどこで相殺されるかを見る。
拡張時間のために、心拍数は低いほどよいのか
拡張期が長ければ、左室はゆっくり弛緩し、十分に血液を受け入れられる。だとすれば、拡張機能が悪い患者ほど心拍数は低い方がよいのだろうか。一拍に使える時間だけを考えると自然な推論だが、循環が必要とするのは一分あたりの流量である。本稿では、一回拍出量(SV)、充満圧、心房と心室の時間関係を同時に追い、心拍数を上げると左房圧がかえって下がる場合があることを、臨床研究とモデル実験で確かめる。読み終えたときに、心拍数を変えたとき心拍出量と左房圧がどう動くかを、一回量、充満の終わりの容積、
一拍を読む――圧・容積・流量は、同じ一拍のどこを示すか
カテーテル検査で記録する左室圧と大動脈圧、心エコーで見る僧帽弁の流入、画像で測る左室の容積。臨床ではこれらを別々の検査で、別々の時刻に測る。けれども、どれも同じ一拍の一部を切り取ったものである。値が食い違って見えるとき、まず確かめるのは、それが一拍の中の「いつ」の「どこ」の値かということだ。
僧帽弁逆流を治すとEFが下がるのはなぜか――総拍出と前方拍出を分ける
重症の僧帽弁逆流(MR)に経カテーテル的修復(TEER)を行った翌日、心エコーのEFが術前より下がっていた。心筋が手技で傷んだのか、もともと弱っていた心筋が露わになったのか、あるいはそのどちらでもないのか。MRの評価でEFが「保たれている」ことは何を保証しているのか。
静脈還流と循環平衡――心拍出量は心臓と血管の交点で決まる
Guytonの静脈還流曲線では、右房圧が上がるほど心臓へ戻る血液は減る。ところが、輸液をすると右房圧が上がり、心拍出量も増えることが多い。右房圧が還流を妨げるのなら、なぜ両方が一緒に上がるのだろうか。右房圧を還流の「背圧」とみなす解釈は、原因と結果を取り違えさせやすく、生理学者や臨床医を長く混乱させてきたと指摘されている。
収縮性を高めれば心拍出量は増えるのか――静脈還流と左右心
左室の収縮性を高めれば、心拍出量(CO)は増えるのか。前負荷と後負荷を固定した単離心室なら、答えはほぼ「増える」である。しかし閉じた循環では、心臓が送り出す量と心臓へ戻る量が一致しなければならず、充満圧も結果として動く。本稿のモデル比較では、左室の張力を上げてもCOの増加は数%にとどまり、より目立ったのは左房圧と左室容積の低下だった。その大きさは総血液量によって異なった。さらに、左室の設定を変えなくても、右室側の条件だけで左室の充満と拍出は変わった。
HFpEF:肺動脈圧だけで右室は読めるか
右心カテーテル検査で、平均肺動脈圧(mPAP)が前回より低かったとする。肺循環の負荷が軽くなり、右室が楽になったと読んでよいだろうか。mPAPは、右室が血液を送り出す先の圧である。同時に、右室が血液を送り出した結果として生じる圧でもある。そのため、同じ低下が負荷の軽減を表すこともあれば、右室が十分な血液を送れなくなったことを表すこともあり得る。
Guytonの循環平衡――心臓と血管が流量を決める
安定した閉ループ循環では、心臓が送り出す平均流量と、心臓へ戻る平均流量が一致する。片方が上回り続ければ、その間に血液がたまり続けるからだ。
一拍を、圧・容積・流量から読む
左室は、大動脈弁が開くまで血液をほぼ一定量に保って圧を上げ、弁が開くと血液を送り出す。圧を作る段階と、流れを作る段階。この二つを一枚で追えるのが、圧–容積ループ(PV loop)である。