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EDPVR
拡張能と弛緩|記事と実験のガイド
充満圧が高いとき、何が起きているのか。治療後に圧が下がったとき、何が変わったのか。「拡張能」という一語には、心筋が力を抜く速さ、力が抜けた後の心室の広がりやすさ、血液が入ってくる条件、心室を外から押す圧、全身での血液の配分が重なっている。この連載では、モデルで操作できる条件を変える実験と、臨床研究や原著のデータを並べて読み、圧の変化をもう一度生理の言葉へ戻していく。
僧帽弁を広げると、左房圧と左室の圧はどう変わるか
僧帽弁狭窄を経皮的に解除すると、平均左房圧は下がったのに、左室拡張末期圧(LVEDP)は上がった。どちらも「充満圧」と呼ばれるので、同じ患者で充満圧が改善し、同時に悪化したように見える。しかし二つの値は、測っている心腔も、心周期の時点も違う。本稿の問いは、弁口が広がったとき左房と左室の圧がそれぞれどちらへ動くのか、そしてLVEDPの上昇は左室が硬くなった証拠なのか、である。読み終えたときに、平均左房圧とLVEDPが別々に動く理由、同じ受動圧–容積関係の上でも拡張末期の圧が上が
充満圧は前負荷か――Frank–Starling曲線を2つの軸で読む
中心静脈圧(CVP)や肺動脈楔入圧は、長く心室の前負荷の目安として使われてきた。Kumarらは、健康な志願者に3 Lの生理食塩水を3時間かけて投与し、楔入圧やCVPが、心室の拡張末期容積の指数とも、一回拍出量の指数とも相関しないこと、輸液による変化どうしも相関しないことを示した。一方、拡張末期容積の指数は一回拍出量の指数と相関していた。敗血症の患者でも、輸液前のCVPや楔入圧で輸液への反応を予測する力は低かった(ROC曲線下面積はいずれも0.6前後と
「心室が硬い」とは、どの曲線の傾きか
LVEDPが上がった。心室が硬くなったのだろうか。同じ心室に、より多くの血液が入っただけでも圧は上がる。圧が高いことと、心室の性質が変わったことを区別するには、圧の一点を容積と組にして、圧容積関係の曲線の上に置き直す必要がある。
心室を2本の曲線で表す――ESPVRとEDPVR
「EFが下がったので収縮が悪くなった」「LVEDPが高いので心室が硬い」。一拍の数値から心室の性質を読むのは、臨床ではよくあることだ。しかし、一拍の数値は心室の性質だけでなく、そのときの充満(前負荷)と、送り出す先の負荷(後負荷)でも変わる。Kassらは、摘出したイヌの心室で前負荷と後負荷を別々に制御して変え、EF(後負荷で大きく低下)や最大dP/dt(前負荷に比例して増加)など多くの指標が負荷で変わることを示した。収縮末期圧–容積関係(ESPVR)は、強心刺激への反応はむし
充満圧を、容積・硬さ・弛緩・外圧から読む
左室充満圧は、血液を受け入れるときに必要となる圧を表す。左房から左室へ流れる血液は、拡張期の圧較差に沿って移動する。左室が硬くなると、同じ容積まで満たすために高い圧が必要になる。弛緩が遅れれば、流入を始める時刻と、充満に使える時間が変わる。
PV関係から、Starling曲線を導く
同じ収縮状態の心室では、充満が増えると一回拍出量も増える。Frank–Starlingの機序である。PV平面ではループの右端が右へ動き、駆出に使える容積が増えることに対応する。