大きなv波は、強いMRを意味するか――左房の受け入れと押し出し

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目次

僧帽弁逆流(MR)を減らしたのに、左房のv波が高いまま残る。反対に、大きなMRがあってもv波が目立たない患者もいる。左房の圧波形は、流れ込んだ血液の量だけで決まるのだろうか。本稿では、左房圧の波の高さが、左房の容積の増え方、左房の受け入れやすさ、心房自身の収縮、そして左室・肺静脈との流れの組合せで決まることを、二つのモデル実験でたどる。読み終えたときに、同じ逆流量でも左房圧が違いうる理由と、心房の押し出しを強めても前方への充満が同じだけ増えるとは限らない理由を説明できるようにしたい。

臨床の出発点はFuchsらのカテーテル研究である。楔入圧波形とMRの造影所見を対応させた結果を、図1に表としてまとめた。二つの行は別々の問いに答えている。上段は大きなv波がある患者を出発点にして、そのうちMRがないか微量だった人の割合を、下段は重症MRの患者を出発点にして、v波が小さかった人の割合を示す。分母が違うので、二つの割合の大小を比べる表ではない。読み取るべきなのは、どちらの向きから見ても、v波の高さとMRの重症度が一致しない患者が3割を超えていたことである。v波は診断の手掛かりになるが、その高さだけでMRの量を測ることはできない。1)

図1:大きなV波だけでは、MRの重症度は決まらない

2行の表。大きな楔入圧V波がある50例のうち18例36%はMRなしまたはごく微量。重症MR37例のうち12例32%は小さいV波。両行で分母が異なる。大きなV波は平均楔入圧を10 mmHg以上上回り、小さいV波は上回る幅が5 mmHg未満。

Fuchsらの一次抄録に記載された人数を独自の表にした。連続する心カテーテル検査1,021件を調べ、主に弁膜症が疑われた208例で楔入圧波形を得た研究で、MRは造影で分類された。上段は「大きなV波がある50例」、下段は「重症MRがある37例」を分母にした別の問いであり、割合の大小を群間比較する表ではない。「大きい」「小さい」は平均楔入圧を上回る幅による原著の分類。人数・割合を示し、誤差棒は用いていない。1)

Fuchs RM et al. Limitations of pulmonary wedge V waves in diagnosing mitral regurgitation. Am J Cardiol. 1982;49:849–854. doi:10.1016/0002-9149(82)91968-3. 一次抄録の数値・分類に基づく本稿の独自作表。

左房は血液をため、通し、押し出す

左室収縮期には僧帽弁が閉じ、肺静脈から戻った血液を左房が受け入れる。このreservoir機能が、連続して戻る肺静脈血と、間欠的にしか開かない僧帽弁の間をつなぐ。僧帽弁が開くと、ためた血液が左室へ移り、肺静脈からの血液も左房を素通りするように流れるconduit相になる。拡張末期には心房が収縮し、残りの血液を押し出すbooster相となる。

三つの相は独立したポンプではない。reservoir相でどれだけためたかが、次の流出と、心房収縮の直前の容積を決める。conduit相の流れも、肺静脈、左房、左室の圧が作る結果である。したがって、左房の容積変化を測っても、それは左房筋だけの能力を表すわけではない。

dVLAdt=QPVQMV\frac{dV_{\mathrm{LA}}}{dt}=Q_{\mathrm{PV}}-Q_{\mathrm{MV}}

V_LAは左房容積(mL)、Q_PVは肺静脈から左房へ、Q_MVは左房から左室へ向かう体積流量(mL/s)で、それぞれこの向きを正とする。式は、左房容積の増減が入る量と出る量の差で決まることを表す。MRではQ_MVが負になり、肺静脈からの流入に左室からの逆流が加わる。逆に、左房容積がほとんど変わらない時間帯でも、二つの流量が等しければ血液は通り続けている。心房収縮で左房容積が減ったときも、減った分がすべて左室へ入ったとは限らず、肺静脈側への逆行流を含めて読む必要がある。

reservoirが硬いと、どこへ圧が伝わるか

左室収縮期にMRがなければ、左房容積を増やす主な流れは肺静脈からの流入である。MRがあれば、左室からの逆流がそこに加わる。同じだけ容積が増えても、左房が小さな容積増加に大きな圧上昇を要する状態にあれば、v波は高くなりやすい。高くなった左房圧は肺静脈からの流入を妨げ、圧と流量の変動を肺循環側へ伝える。

CLA,local=dVLAdPLA,tm,ΔPLA,tmΔVLACLA,localC_{\mathrm{LA,local}}=\frac{dV_{\mathrm{LA}}}{dP_{\mathrm{LA,tm}}},\qquad \Delta P_{\mathrm{LA,tm}}\simeq\frac{\Delta V_{\mathrm{LA}}}{C_{\mathrm{LA,local}}}

C_LA,local(mL/mmHg)は、ある作動点の近傍で考える局所コンプライアンスで、左房の経壁圧P_LA,tm(mmHg)が1 mmHg上がるあいだに容積がどれだけ増えるかを表す。右の近似のΔV_LA(mL)は左房容積の増加量、つまり上の収支式で流入と流出の差を積分した量であり、これを局所コンプライアンスで割ると圧の上昇幅になる。同じΔVでもCが小さければ圧は大きく上がり、同じ左房でも容積が大きく非線形な受動曲線の急な側にあればCは小さい。ただしこの近似は、外的拘束や能動張力など他の条件が変わらない小さな容積変化を想定している。実際のreservoir相では心房の弛緩や心室との機械的な連動も働くので、v波の高さを一つ測って左房壁の材料定数へ換算することはできない。

ここで使う圧は経壁圧であり、実験のPV図の縦軸もこれに対応する。一方、時間波形に描く左房圧は内腔圧である。肺循環の下流圧として働くのは内腔圧、心房壁の伸びと対応するのは経壁圧で、左房の外側の圧が変わる比較では両者の差も解釈に関わる。

臨床では、Zalaquettらが経カテーテル僧帽弁治療を受けた255例を後ろ向きに解析し、MRが解消してもv波が十分に低下しない群と、低い左房reservoir strainなどとの関連を報告した。ただし、この研究のコンプライアンスは、術前の平均左房圧とMR解消後のv波の低下という圧と治療反応による操作的な分類であり、局所のdV/dPを直接測ったものではない。分類そのものにv波の反応が使われているので、v波と左房の性質の関係を独立に検証した研究とも言えない。2)

ReddyらはHFpEF患者を心房細動の病歴と持続性で分け、心房細動の負担が大きい群ほど左房のreservoir機能や作動中のコンプライアンスが低いことを報告した。一方、推定した左室の心腔stiffnessは群間で同程度だった。左房と肺循環側の負担を、左室の硬さだけで説明しないという視点を与える所見である。群間比較なので、心房細動そのものの因果効果を切り出した研究ではない。3)

実験1:同じ逆流口で、左房の受け入れやすさを変える

一つ目の実験では、僧帽弁の閉鎖時有効逆流口面積を0.20 cm²に固定し、左房の受動係数を0.75と1.33で比べる。逆流の入口を同じにしたまま左房の受け入れやすさだけを変え、左房圧、一拍の逆流量、前方心拍出量がどう変わるかを見る。HR 70 bpm、総血液量4,935 mLは共通である。逆流口を0にした二条件も同じ設定で計算してあり、その波形は後の図で、数値は本文で示す。

局所コンプライアンスの式からは、次の予測が立つ。reservoir相に同じだけ左房容積が増えるなら、受動係数が高く受け入れにくい左房ほど、圧の上昇は大きい。この関係は逆流に限らず、MRがない条件で肺静脈からの流入によって容積が増える場合にも同じように働くはずである。

インタラクティブ・シミュレーション

同じ逆流口で、左房の受け入れ方を比べる

シナリオ 2件・グラフ 3件・出力 8件・操作 0件

  • 左房圧
  • 僧帽弁の流量
  • グラフ 3
  • 平均左房圧
  • 平均左房圧
  • 一拍MR逆流量
  • 一拍MR逆流量
  • 有効CO
  • 有効CO
  • MV閉鎖時LV腔内圧
  • MV閉鎖時LV腔内圧

シミュレーションを操作するにはJavaScriptを有効にしてください。

二条件で最初に確かめたいのは、一拍の逆流量がほぼ同じかどうかである。同じ逆流口面積でも、左室と左房の圧差が変われば逆流量も変わるので、左房圧の差を左房の性質に帰属させる前に、同じ量が戻っていたかを確認する必要がある。そのうえで平均左房圧と前方心拍出量を比べる。注1

逆流口0.20 cm²の二条件では、一拍の逆流量は受動係数0.75で30.7 mL、1.33で30.3 mLとほぼ同じだった。それでも平均左房圧は、1.33の方が約2 mmHg高かった(12.35と14.30 mmHg)。前方COは5.27と5.20 L/minである。予測どおり、左房圧は戻ってくる逆流量だけでは決まらず、それを受け止める左房と、循環全体の応答も映している。

逆流口を0にした条件と比べると、MRそのものの効果も分かる。左房受動係数0.75では、逆流口0から0.20 cm²への変更で平均左房圧は7.55から12.35 mmHgへ上がり、前方COは5.65から5.27 L/minへ減った。係数1.33では平均左房圧が9.22から14.30 mmHgへ上がり、前方COは5.57から5.20 L/minへ減った。MRがない二条件どうしでも、係数1.33の方が平均左房圧は高い。

reservoir相を読むには、僧帽弁が閉じている間の左房容積の増加と、圧の上昇を対応させる。PV図では受け入れと能動収縮の軌道が別々に現れるので、同じ平均左房圧でも、どの時相で圧が高いかを区別できる。肺静脈の体積流量のS波・D波も、その前後の圧差と組にして読むと意味がはっきりする。

図2は、逆流口0と0.20 cm²の四条件の定常拍の波形である。左列がMRなし、右列が逆流口0.20 cm²で、各列の中で緑(受動係数0.75)と橙(1.33)を比べる。灰色帯で示す前方駆出の後半から、縦の点線で示す僧帽弁の順行性充満の再開までの区間を見ると、MRのない左列でも、橙の左房圧の隆起は緑より高い。MRのある右列では、駆出区間に僧帽弁流量が負になって逆流が起こり、同じ時相の左房圧は高いが、収縮期の圧波形には複数の隆起が現れる。そのため一つの点をv波ピークとして数値化せず、流量の向きと時相に対応させて圧を読む。一拍全体の最大圧を選ぶとa波も候補に入り、reservoir相の圧上昇を比べたことにならないからである。

図2:左房圧の隆起を、僧帽弁流量の時相と合わせて読む

逆流なしと逆流口0.20 cm²の2列で、左房受動係数0.75と1.33の左房圧・僧帽弁流量を比較する。受動係数1.33では心室駆出後半から順行性充満再開前の左房圧が高い。逆流ありでは収縮期の僧帽弁流量が負になり、左房圧に複数の隆起が見える。

本モデルの定常拍の波形。左列は僧帽弁逆流口面積0、右列は0.20 cm²。緑は左房受動係数0.75、橙は1.33で、上段が左房内腔圧、下段が僧帽弁体積流量。負の流量は左室から左房への逆流を表す。灰色帯は各列の係数0.75における大動脈への前方駆出区間、縦の点線は各条件の僧帽弁順行性充満の再開時点。MRのある波形には複数の圧隆起が現れるため、単一のv波ピーク値は定めず、流量と時相を対応させて圧を読む。

本アプリの保存条件に基づく時系列を用いた本稿の独自作図。患者の実測データではない。

平均左房圧は一拍の平均なので、reservoir相の圧の隆起が高くなれば、平均も押し上げられうる。これに対し、僧帽弁閉鎖時の左室圧は、一拍平均とは別の時点の値である。圧波形を並べれば、左房と左室の圧の差にどの相が関わったかを確かめられる。なお、このモデルの左房圧は直接の内腔圧であり、楔入圧のカテーテル測定そのものではない。

強い心房収縮は、いつ充満を助けるのか

v波と同じ問いは、心房収縮にも向けられる。心房が収縮すると左房圧が上がり、a波が現れる。僧帽弁が開いていて左房圧が左室圧を上回れば、前方への流れが増える。この効果は、左房が発生できる力だけでなく、流入を受け止める左室の圧–容積特性にも左右される。受け手の左室が高い圧にあると、同じ心房収縮でも、左室の容積を増やす効果と左房の圧を上げる効果の配分が変わる。

そのため、A波が大きいことを、そのまま「心房のポンプ機能がよい」「心房収縮の寄与が大きい」と読むことはできない。圧差、弁口、心室の受け入れ方、流れる時間を合わせて見る必要がある。A期の前方流量を積分すれば、その期間に左室へ入った量は得られる。

VA,forward=tA0tA1max{QMV(t),0}dtV_{A,\mathrm{forward}}=\int_{t_{A0}}^{t_{A1}}\max\{Q_{\mathrm{MV}}(t),0\}\,dt

t_A0からt_A1は心房収縮に対応する区間としてあらかじめ定めた時刻(s)、V_A,forwardはその間に僧帽弁を前向きに通った量(mL)である。max{Q_MV, 0}は逆流を除いて前向きの流量だけを数えることを意味する。流量波形の面積が流入量、ピークが単位時間あたりの流量なので、背が高く短い波と、低くても幅の広い波は区別できる。ただしこの積分は、その期間に実際に起きた流入であって、心房収縮を取り除いた場合との差ではない。なお、この実験のE/Aは体積流量のピーク比であり、心エコーの一点で測るDoppler速度の比とは測定が異なる。注2

心不全が進むほど心房の寄与が増え続けるとも限らない。Konoらのイヌ慢性心不全モデルでは、Dopplerで測ったA波の速度時間積分は初期に増えた後、進行とともに低下した。時間をかけて心室と心房の双方が変わった研究なので、単一の係数変更に置き換えることはできないが、「受け手が悪いほどboosterで補える」という単純な図式を見直す材料になる。4)

二つ目の実験では、左室自由壁・中隔の受動係数を1.33に固定し、左房の能動張力倍率を0.75と1.33で比べる。受け手の左室が高めの圧にある条件で、心房の押し出しだけを強める比較である。HR 70 bpm、総血液量4,935 mL、その他の設定は共通である。左室受動係数1.04で同じ変更をした結果は、本文で補足する。

左房の張力を上げれば、僧帽弁が開いて左房圧が左室圧を上回る間は前方流も増えると予測できる。ただし、押し出された血液の行き先は左室だけではない。左室が高い圧で受け止める条件では、その一部が肺静脈へ逆行しやすいと考えられる。

インタラクティブ・シミュレーション

同じ左室条件で、左房の押し出す力を比べる

シナリオ 2件・グラフ 4件・出力 10件・操作 0件

  • 僧帽弁と肺静脈の流量
  • 左房圧
  • グラフ 3
  • 左室PV(経壁圧)
  • 肺静脈Arピーク
  • 肺静脈Arピーク
  • 有効CO
  • 有効CO
  • 平均左房圧
  • 平均左房圧
  • E/A(体積流量比)
  • E/A(体積流量比)
  • A波持続時間(体積流量)
  • A波持続時間(体積流量)

シミュレーションを操作するにはJavaScriptを有効にしてください。

比較の要点は、心房の力を強めたことに見合う前方の充満が得られたかどうかである。そのため、僧帽弁と肺静脈の流量を並べ、前方心拍出量、肺静脈の心房収縮期逆行流(Ar)のピーク、平均左房圧を合わせて読む。

流量波形では、心房収縮の区間に、僧帽弁の前方流と肺静脈のArのどちらが増えたかを確かめる。心房が血液を押し出しても、それが主に左室へ向かうか、肺静脈へ戻るかによって、前方充満への意味が変わる。

左室受動係数1.33で左房の能動張力倍率を0.75から1.33へ上げると、前方COは5.54から5.56 L/minへ増え、平均左房圧は9.30から9.10 mmHgへわずかに下がった。一方、肺静脈のArピークは87.0から137.1 mL/sへ増えた。心房の入力を強めたとき、前方COのわずかな増加と、肺静脈側へ向かう流れのピークの増加が同時に起きたことになる。

左室受動係数1.04で同じ変更をしても傾向は同じで、前方COは5.60から5.62 L/min、平均左房圧は8.49から8.33 mmHg、Arピークは67.3から109.0 mL/sへ変わり、体積流量のE/Aは1.022から0.870へ下がった。どちらの左室条件でも、前方流量の増加は約0.02 L/minにとどまった。同じ左房の張力で比べると、左室受動係数の高い条件の方がArピークは高かった。ただしArのピークは瞬間の流量であり、一拍で逆行した量や心房収縮の寄与率ではない。ピークの高さ、一拍の流量、循環全体へ届く流量を分けて読む必要がある。

a波とv波を、容積と流れに結ぶ

冒頭の問いに戻る。v波の高さは、左室収縮期に左房の容積がどれだけ増えたか(流入と流出の差)と、それを受け止める左房の局所コンプライアンス、さらに循環全体の応答の組合せで決まる。モデルでは、一拍に約30 mLというほぼ同じ逆流でも、左房の受動係数が違えば平均左房圧は約2 mmHg異なり、MRがなくても受け入れにくい左房ではreservoir相の圧の隆起が高かった。大きなv波はMRを疑う手掛かりにはなるが、MRの量を単独で表す物差しにはならない。MRを減らした後にv波が残るなら、左房の受け入れやすさが次に確かめる対象になる。心房の押し出しについても、力を強めるとArのピークは大きく増えたが、前方心拍出量の増加はわずかだった。左房の圧や流れの波を読むときは、その高さに、いつ、どちらから、どれだけの血液が流れたかを加えることで、前方充満を支える能動収縮と、肺静脈血や逆流を受け止めるreservoirの負担を分けて考えられる。

拡張能と弛緩|記事と実験のガイド連載全8回の一覧と、実験の読み方。CircleHeart 次へ|心膜の拘束を強めると、左室の圧は上がるのか第6回へ進む。CircleHeart

注釈

  1. 注1この比較で操作している心房機能

    能動張力倍率は左房筋の力を規定する入力であり、実際の力は筋の長さや運動状態にも依存する。受動係数は平衡受動張力と粘弾性に関わる。どちらの数値も、臨床の正常・異常を分ける境界ではない。すべて規則的な拍動で、心房収縮をゼロにする操作、心房細動の不規則性、独立したAV delay変更は含まない。心房筋症、線維化、長期リモデリングを一つの係数で再現した比較でもない。

  2. 注2流量から読む充満と、心エコーで測る機能

    本実験のE/A、肺静脈S/D、Arは、各流路を通る全体積流量に基づく。Dopplerの局所速度、僧帽弁輪運動e′、左房strainは測定していない。A期流入量はその期間に起きた流入であり、心房収縮の有無以外をすべて固定した反実仮想との差ではない。

    能動張力の実験では、A波を独立したゼロ流量の開始・終了で囲めず、A持続時間とAr−A持続時間差は四条件とも欠測だった。Arのピークや持続時間が得られても、心房収縮の寄与率や、心房収縮を失ったときの影響へ換算しない。本文のE/AとArピークは、保存した体積流量波形に、このモデル用に定めた解析法を適用した値である。

    MRを加えた二条件では僧帽弁充満の区間が欠落または重なり、E/A、肺静脈S/D、Arなどの充満指標は未確定となった。目視の波から数値を補わない。逆流があれば順行性の弁イベントの間も容積一定とは限らないので、この二条件のIVRTを真の等容弛緩として解釈しない。

文献

  1. Fuchs et al. Limitations of pulmonary wedge V waves in diagnosing mitral regurgitation. Am J Cardiol. 1982;49:849–854. doi:10.1016/0002-9149(82)91968-3. 楔入圧v波とMR重症度の対応を検討。↩1↩2
  2. Zalaquett et al. Predictors of Left Atrial Compliance and V-Wave Response in Patients Undergoing Transcatheter Mitral Valve Therapy. JACC Cardiovasc Interv. 2026;19:618–627. doi:10.1016/j.jcin.2025.11.038. baseline mean LA≤12 mmHgまたはMR解消後v波50%以上低下でcompliantと分類。局所dV/dPの直接測定ではない。
  3. Reddy et al. Atrial Dysfunction in Patients With Heart Failure With Preserved Ejection Fraction and Atrial Fibrillation. J Am Coll Cardiol. 2020;76:1051–1064. doi:10.1016/j.jacc.2020.07.009. Fig.3:左房reservoir strainと作動中のコンプライアンス。
  4. Kono et al. Left atrial contribution to ventricular filling during the course of evolving heart failure. Circulation. 1992;86:1317–1322. doi:10.1161/01.CIR.86.4.1317. 慢性microembolizationによるイヌ心不全の経過。