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圧波形
弛緩指標は、心筋だけを測っているのか
左室圧が速く下がるようになり、等容弛緩時間IVRTも短くなった。心筋の弛緩が改善したと考えてよいだろうか。圧下降の速さ、IVRT、僧帽弁流入のE/Aや減速時間は、力が消える速さだけでなく、左室圧がどの高さから下がり始めるか、弁の向こうにどの左房圧があるか、流入を受け止める両心腔がどれだけ広がるかにも左右される。この回では、心筋側の設定を変えずに総血液量だけを変え、これらの指標が負荷によってどう動くかを確かめる。
弁は圧の差を流れに変える――圧較差・流量・弁口面積
大動脈弁狭窄(AS)の重症度は、弁をはさむ平均圧較差(40 mmHg以上)、ジェットの最大流速(4 m/s以上)、弁口面積(1.0 cm²未満)を組にして判断する。ところが、面積からは重症なのに圧較差が小さい例は珍しくない。Hachichaらは、EFが保たれ、体表面積あたりの弁口面積から重症とされた512例のうち、35%で一回拍出量係数が35 mL/m²以下と低く、平均圧較差も低かった(32対40 mmHg)ことを報告した[@a2
大きなv波は、強いMRを意味するか――左房の受け入れと押し出し
僧帽弁逆流(MR)を減らしたのに、左房のv波が高いまま残る。反対に、大きなMRがあってもv波が目立たない患者もいる。左房の圧波形は、流れ込んだ血液の量だけで決まるのだろうか。本稿では、左房圧の波の高さが、左房の容積の増え方、左房の受け入れやすさ、心房自身の収縮、そして左室・肺静脈との流れの組合せで決まることを、二つのモデル実験でたどる。読み終えたときに、同じ逆流量でも左房圧が違いうる理由と、心房の押し出しを強めても前方への充満が同じだけ増えるとは限らない理由を説明できるように
「拡張能が悪い」とは、何が悪いのか
息切れのある患者で左室拡張末期圧LVEDPが高く、治療後に下がった。これを「拡張能が改善した」とまとめてよいだろうか。心筋が速く力を抜けるようになったのか、心室が広がりやすくなったのか、それとも入っている血液量や、心室を外から押す圧が変わったのか。同じ圧の低下でも、どれが起きたかによって診療へ持ち帰る意味は異なる。
一拍を読む――圧・容積・流量は、同じ一拍のどこを示すか
カテーテル検査で記録する左室圧と大動脈圧、心エコーで見る僧帽弁の流入、画像で測る左室の容積。臨床ではこれらを別々の検査で、別々の時刻に測る。けれども、どれも同じ一拍の一部を切り取ったものである。値が食い違って見えるとき、まず確かめるのは、それが一拍の中の「いつ」の「どこ」の値かということだ。
動脈は心臓に何を課すか――抵抗・コンプライアンス・Ea
血圧は、臨床で最も多く測られる血行動態の数値である。後負荷の目安として、平均血圧や体血管抵抗を使うことも多い。では、平均血圧が同じなら、左室が受ける負荷も同じだろうか。Kellyらは、10人で左室の圧–容積と大動脈の圧・流量を同時に測り、収縮末期圧を一回拍出量で割った実効動脈エラスタンスEaが、大動脈の入力インピーダンスとコンプライアンスから三要素Windkesselで求めた負荷の指標とよく一致すること、高齢の高血圧例(6人)では平均の抵抗から求めた値を最大25%上回ることを
後負荷を、抵抗・圧波形・Eaで捉える
血管抵抗を下げると、左室は血液を送り出しやすくなる。その変化は、PV loopの収縮末期点が左へ動くことから読める。さらに時間がたつと、心臓へ戻る血液と拡張末期容積も変わる。後負荷への応答を理解するには、この「送り出しやすさ」と「循環が落ち着くまでの変化」をつなげて考える。
一拍を、圧・容積・流量から読む
左室は、大動脈弁が開くまで血液をほぼ一定量に保って圧を上げ、弁が開くと血液を送り出す。圧を作る段階と、流れを作る段階。この二つを一枚で追えるのが、圧–容積ループ(PV loop)である。