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title: "「心室が硬い」とは、どの曲線の傾きか"
locale: "ja"
public_slug: "ventricular-stiffness-pressure-volume-slope"
tags: ["拡張能", "EDPVR", "サルコメア", "充満圧", "経壁圧"]
published_at: "2026-09-23T05:44:26.661921Z"
updated_at: "2026-09-23T05:44:26.661921Z"
article_content_id: "7235a50b-6a63-4748-b6ae-f2512ae705a7"
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# 「心室が硬い」とは、どの曲線の傾きか

LVEDPが上がった。心室が硬くなったのだろうか。同じ心室に、より多くの血液が入っただけでも圧は上がる。圧が高いことと、心室の性質が変わったことを区別するには、圧の一点を容積と組にして、圧容積関係の曲線の上に置き直す必要がある。

この回の問いは、「硬い」という言葉がどの量を指しているかである。筋の材料としての硬さ、心腔の圧容積関係の傾き、ある圧で収まる容積は、互いに関係しながらも別の量である。LVEDPの上昇が、同じ曲線の上を右上へ移動した結果なのか、曲線そのものが上へ移った結果なのか。それを、どの圧・どの容積で比べれば区別できるかを説明できるようになることが目標である。そのうえで、PV loopの一拍の下側の線を受動曲線と読めるか、臨床の容量負荷試験が何の傾きを見ているのかを考える。

## titinとcollagenから、心室の広がり方へ

心筋は、力を発生していない状態でも、伸ばせば張力を生む。この受動張力の主な担い手が、筋節の中のtitinと、細胞の外にあるcollagenである。GranzierとIrvingの心筋実験では、それぞれの寄与は筋節長に依存していた。受動的な硬さは、伸び方によらず一定の抵抗を示す単純なばねではない。[1)](#article-reference-granzier1995)

ヒトの拡張不全を考えるうえでも、線維化だけを見ていては情報が足りない。Borbélyらは、同じ筋節長・Ca²⁺非存在下で、拡張不全患者の心筋細胞の受動張力が高いことを示した。Zileらの生検研究では、高血圧を伴うHFpEF群で、collagenとtitinの両方に由来する硬さの増加が認められた。材料の側にも、細胞の内と外に複数の変化がある。[2)](#article-reference-borbely2005)[3)](#article-reference-zile2015)

ただし、心筋片の張力と心室の圧は別の量である。容積が増えると壁が伸ばされ、材料はその伸び（ひずみ）に応じた応力を返す。その応力は、壁厚と心腔の曲がり具合を介して、壁の内外の圧差である経壁圧を支える。カテーテルで測る腔内圧には、これに心室の外側の圧が加わる。したがって同じ材料でも、壁の厚さ、心腔の大きさ、筋線維の配置が違えば、同じ容積の増加に対する圧の上がり方は変わる。本稿では、材料の応力–ひずみ関係の傾きと、心腔の圧–容積関係の傾きを分けて扱い、後者をchamber stiffnessと呼ぶ。

## 局所の傾きと、同じ圧で入る容積

条件を固定した圧容積関係の上で、容積を少し増やしたときに圧がどれだけ増えるか。これが局所的な心腔の硬さK\_ch（mmHg/mL）である。complianceは同じ関係を逆向きに読み、圧を少し上げたときに容積がどれだけ増えるかを表すC\_ch（mL/mmHg）で、局所の硬さの逆数になる。圧には、壁を膨らませる経壁圧P\_tm、すなわち腔内圧から心室の外の圧を引いた値を使う[^note-1]。

$$
K_{\mathrm{ch}}=\frac{dP_{\mathrm{tm}}}{dV},\qquad C_{\mathrm{ch}}=\frac{dV}{dP_{\mathrm{tm}}}=\frac{1}{K_{\mathrm{ch}}}
$$

心室の圧容積関係は非線形である。経壁圧が正の通常の充満域では、容積が小さいうちは少し入れても圧はあまり上がらないが、容積が大きくなるほど、同じ量で圧が大きく上がる。つまり同じ曲線の上でも、作動点が右上へ移れば局所の硬さは大きくなる。材料が変わらなくても「硬く」なり得るということである。「血液量が増えて同じ曲線を上った」ことと「同じ容積で圧が高い曲線に変わった」ことは、分けて確かめる必要がある。[4)](#article-reference-nikolic1988)

もう一つの読み方は、ある圧でどれだけの容積を収められるかである。これをventricular capacitanceと呼び、V@Pのように比較する圧を添えて表す。単位は容積（mL）であり、局所のcompliance dV/dPとは異なる。曲線の位置を見るV@Pと、その点での傾きを見るdP/dVを組み合わせると、「小さい容積で高い圧に達する」ことと「その点で少し入れると圧が大きく増す」ことを分けて記述できる。[5)](#article-reference-klotz2006)

二つの読み方の違いを、曲線の振幅だけを変えた数学例で見てみる（[図1](#article-figure-fig02-nonlinear-stiffness)）。曲線の曲がり方を決める指数の係数は固定し、圧の大きさを一律に約1.28倍した。この倍率は、後の実験で比べる二つの受動係数の比（1.33/1.04）と同じだが、図の曲線はアプリの出力ではない。左のパネルでは容積を110 mLに固定して、二本の曲線を縦に比べる。同じ容積での圧も接線の傾きも約1.28倍になり、傾きは0.490から0.627 mmHg/mLへ増える。右のパネルでは圧を20 mmHgに固定して横に比べる。振幅の大きい曲線では、同じ圧で収まる容積が119.9から112.6 mLへ減る一方、その点の接線の傾きは0.660と0.677 mmHg/mLでほとんど変わらない。同じ曲線の変化が、同容積で比べれば傾きの差として、同圧で比べれば容積の差として現れる。

<a id="article-figure-fig02-nonlinear-stiffness"></a>
**図1：曲線の振幅を変えたときの、同容積と同圧での比較**

![同じ指数係数で振幅だけ約1.279倍した二つのPV曲線。左は110 mLでの傾きが0.490から0.627 mmHg/mLへ増える。右は20 mmHgでの容積が119.9から112.6 mLへ減り、傾きは0.660と0.677 mmHg/mLで近い。](<https://hidoxfvibxkboksemhdv.supabase.co/storage/v1/object/public/article-images/3fe81774-76b8-45bc-a7eb-683e2fa19ea2/bd4be6bb-2607-45bc-8bff-e8e26fb5ef4e.png>)

説明用の関係 P=k・2{exp\[0.030(V−40)\]−1}（PはmmHg、VはmL）を使用。k=1と1.33/1.04=約1.279を比較し、指数係数は固定した。破線は各比較点の接線。左は同容積での傾き、右は同圧での容積と傾きを示す。数値は独自の数学例で、アプリのPV関係のfitや実験出力ではない。

本稿による独自作図。説明のために選んだ数値を使用。

<details>
<summary>振幅を変えると、同じ容積・同じ圧での傾きはどう変わるか</summary>

曲線の振幅をk倍する、説明用の指数関係を考える。Pは経壁圧（mmHg）、Vは容積（mL）である。kは振幅の倍率（無次元）、aは圧の尺度（mmHg）、βは曲がり方を決める係数（mL⁻¹）、V₀は圧が0になる容積（mL）である。1/β（mL）は、P+kaがe倍になるのに要する容積の増分にあたる。図ではa=2 mmHg、β=0.030 mL⁻¹、V₀=40 mLとし、a、β、V₀を固定してkだけを変えた。この式は考え方を分けるための数学例であり、本アプリの心室PV関係をそのまま表す式ではない。

$$
P_k(V)=ka\left[e^{\beta(V-V_0)}-1\right]
$$

$$
K_k(V)=\frac{dP_k}{dV}=ka\beta e^{\beta(V-V_0)}=kK_1(V)
$$

局所の傾きK\_kの単位はmmHg/mLである。同じ容積で比べれば、圧も局所の傾きもk倍になる。ところが同じ圧Pで比べると、それぞれの曲線の異なる容積を見ていることになる。そのときの傾きと容積は次の式になる。

$$
K_k(P)=\beta(P+ka),\qquad V_k(P)=V_0+\frac{1}{\beta}\ln\!\left(1+\frac{P}{ka}\right)
$$

図のように正の圧で比べると、kを大きくするほど、同じ圧で入る容積は小さくなる。一方、Pがaやkaより十分大きい範囲では、同圧での傾きはどちらもおよそβPとなり、差は小さい。したがって、同圧での傾きが似ていても曲線が同じとは限らない。傾きを報告するときは、比較した圧または容積を添える必要がある。

なお、この式ではV&lt;V₀で圧が負になる。この数学例の中では、平衡の容積より小さく縮んだ壁が元へ戻ろうとする力を、負の経壁圧として表す形になる。これは受動的な復元力の考え方を示す概念上の説明で、負圧側の形を原著で確かめたものではない。生体の心室が収縮末期にこの領域へ入るか、入ったときに早期充満へどれだけ寄与するかは、この式からは決まらない。

</details>

## 一拍の下側の線を、そのまま受動曲線と読めるか

PV loopの充満部分をたどる線には、受動特性以外のものも重なっている。まだ消えきっていない能動張力（第1回）、流入に伴う粘弾性の抵抗、拡張後期の心房収縮などである。Nikolicらは流入を制御し、異なる容積で十分に弛緩させた心室の圧を求めて、通常の充満軌道と受動PV関係を区別した。普段の一拍がたどる経路は、心室の材料だけで決まる線ではなく、その条件で循環全体が選んだ経路でもある。[4)](#article-reference-nikolic1988)

一つのEDP/EDVの点から曲線全体を推定する手法にも、追加の仮定がある。Klotzらの単拍推定は、正規化した曲線の形が共通であることを利用した方法であり、一点だけで任意の曲線が一意に分かるという意味ではない。測定点、推定した曲線、モデルが定めた材料則を区別しておくと、何を比較しているかが明確になる。[5)](#article-reference-klotz2006)

## 実験：受動特性と総血液量を別々に変える

実験は、受動係数を固定して総血液量だけを変える比較を二つ並べて進める。最初の比較では、左室自由壁と中隔の受動係数を1.04に固定し、総血液量4935 mLと5500 mLを比べる。同じ受動特性のもとで、血液量だけで作動点がどう動くかを見る。次の比較では係数を1.33に固定し、同じ血液量の変更を行う。二つを並べると、同じ総血液量の変更に対する応答が、受動特性によってどう違うかが分かる。総血液量をそろえて受動係数だけを変える比較（4935 mL）は、第1回で見た。総血液量をそろえることは、前負荷や後負荷をそろえることではない。受動係数によって左房圧、容積、拍出が変わること自体が、この閉じた循環の比較の結果である。読むのは、PV loop、僧帽弁閉鎖時の左室の圧と容積、平均左房圧、心拍出量である。総血液量は各条件で固定し、反射による心拍数や血管トーンの調節は加えない。比べるのは、循環が毎拍同じ経過を繰り返す周期定常状態である。

本アプリの受動係数は、同じひずみに対する平衡受動応力とその接線を比例して変え、粘弾性の枝の係数も同時に変える。1.04から1.33への変更は基準に対して約1.28倍で、数学例のkのような振幅の変更にあたり、βのように曲線の曲がり方を決める指数係数を変える操作ではない。ただし倍率がかかるのは壁の材料の応力であり、心腔の圧容積関係全体がそのまま1.28倍になるとは限らない。右室自由壁の受動設定、心拍数、弁の条件はそろえている。

<details>
<summary>結果を見る前に予想すること</summary>

図の数学例をそのまま当てはめれば、受動係数を上げると、同じ経壁圧で収まる容積が減り、同じ容積での圧と傾きが増すと予想される。同じ圧での傾きは、それほど変わらないかもしれない。これは結果を見る前の予想である。実験が違う結果を示したら、測定時点に残る能動張力、粘弾性、心室間の相互作用が重なった可能性を考える。

</details>

## インタラクティブ・シミュレーション: 受動係数1.04：血液量を増やす

- Scenarios: 2
- Graphs: 2
- Outputs: 10
- Controls: 0
- Output: 平均左房圧
- Output: 平均左房圧
- Output: MV閉鎖時LV容積
- Output: MV閉鎖時LV容積
- Output: 有効CO
- Output: 有効CO
- Output: MV閉鎖時LV腔内圧
- Output: MV閉鎖時LV腔内圧
- Output: MV閉鎖時LV経壁圧
- Output: MV閉鎖時LV経壁圧

まず受動係数を1.04に保ち、総血液量を4935から5500 mLへ増やすと、僧帽弁閉鎖時の左室容積は143.7から167.8 mL、平均左房圧は8.40から12.72 mmHgへ増え、心拍出量は5.61から6.42 L/minへ増えた。受動特性を変えなくても、血液量だけで左室の作動点は右上へ移り、左房圧は上がった。閉鎖時の左室容積の増加は、加えた565 mLの一部にとどまる。

では、受動的な抵抗を強めた心室で同じ変更を行うとどうなるか。次の比較では受動係数を1.33に固定し、総血液量を同じく4935 mLから5500 mLへ増やす。図の数学例のように、同じ圧で収まる容積が小さい曲線の上で作動するなら、容積の増え方は小さく、左房圧の上がり方は大きくなると予想できる。

受動係数1.33で同じ血液量の変更を行うと、閉鎖時の左室容積は142.3から162.3 mL、平均左房圧は9.18から14.66 mmHgへ増え、心拍出量は5.55から6.24 L/minへ増えた。係数1.04の組と比べると、容積の増え方は小さく、左房圧の上がり方は大きい。この条件範囲では、受動的な抵抗を強めた心室ほど、血液量を増やして拍出を増すときに、より高い左房圧を伴った。

## インタラクティブ・シミュレーション: 受動係数1.33：同じ容量負荷を比べる

- Scenarios: 2
- Graphs: 2
- Outputs: 10
- Controls: 0
- Output: 平均左房圧
- Output: 平均左房圧
- Output: MV閉鎖時LV容積
- Output: MV閉鎖時LV容積
- Output: 有効CO
- Output: 有効CO
- Output: MV閉鎖時LV腔内圧
- Output: MV閉鎖時LV腔内圧
- Output: MV閉鎖時LV経壁圧
- Output: MV閉鎖時LV経壁圧

閉鎖時の左室腔内圧も上がった（係数1.04で10.91から20.17 mmHg、1.33で13.10から23.35 mmHg）。ただし総血液量5500 mLの2条件では、僧帽弁が閉じるのは心室Ca入力の開始後である。20.17と23.35 mmHgには、新たな収縮に伴う圧上昇が含まれ得る。この閉鎖時の圧を、臨床で心室の昇圧前に読むLVEDPと同じ値としては扱わない。上の比較で容積、平均左房圧、心拍出量を中心にしたのは、測定時点の違いに左右されにくい量で変化を確かめるためである。

二つの比較の出発点、つまり総血液量4935 mLの2条件は、第1回で受動係数だけを変えて比べた組でもある。閉鎖時の左室容積は143.7と142.3 mLとほぼ同じで、閉鎖時の腔内圧は10.91と13.10 mmHgだった。受動係数の違いは、同程度の容積で圧が高いという形で現れている。この閉鎖時の圧も、純粋な受動圧ではない点は同じである。

二つの血液量だけでは、作動点が二つ得られるにとどまる。総血液量を段階的に変えた周期定常を並べれば、作動点が連なった線が得られる。見るのは線どうしの位置関係で、同じ容積付近でどちらの線が上にあるか、同じ圧でどちらの線が左にあるかを比べる。ただし、ここで見る下側の拡張期の線を作る点は各条件の最大容積時点であり、残存張力、粘弾性、左右心の相互作用を含んでいる。最大容積になる時点が心室の活性化後に来る条件では、新たな収縮による圧上昇も重なり得る。したがって、この線は純粋な受動曲線としては読まない。

受動係数1.04と1.33のそれぞれで、12の総血液量について周期定常の計算点が得られた。[図2](#article-figure-fig02-formal-diastolic-locus)は、各計算点の最大容積時点の容積と経壁圧を、低圧部を拡大して示したものである。見るのは、容積がほぼ同じ点どうしの縦の位置である。強調した総血液量4441.5 mLの計算点では、最大左室容積は117.2と117.1 mLとほぼ同じで、その時点の経壁圧は5.19と6.43 mmHgだった。この計算点では、受動係数を上げた条件のほうが、同程度の容積で経壁圧が高い。

<a id="article-figure-fig02-formal-diastolic-locus"></a>
**図2：血液量を変えた曲線解析の最大容積時点を、低圧部で拡大する**

![左室容積を横軸、同じ最大容積時点の経壁圧を縦軸とする、血液量を変えた曲線解析の2系列各12点。受動係数1.04は青い丸、1.33は橙の四角。総血液量4441.5 mLでは容積がほぼ同じ117 mLで、経壁圧は5.19と6.43 mmHg。純粋な受動曲線の当てはめはしていない。](<https://hidoxfvibxkboksemhdv.supabase.co/storage/v1/object/public/article-images/3fe81774-76b8-45bc-a7eb-683e2fa19ea2/e56ba676-e442-454c-a346-f748068a7543.png>)

本アプリの血液量を変えた曲線解析から、左室の最大容積時点の容積と経壁圧を抽出し、低圧部を拡大して独自に作図した。受動係数1.04／1.33の各12計算点を総血液量の順に結んでおり、純粋な受動EDPVRのfitではない。強調した総血液量4441.5 mLの点は、117.2 mL・5.19 mmHgと117.1 mL・6.43 mmHg。最大容積時点には新たな収縮の開始が重なり得るため、線の傾きを受動的な硬さと同一視しない。

本アプリの保存済み血液量を変えた曲線解析データを用いた本稿の独自作図。

<details>
<summary>表示線の傾きと、材料則の微分を分ける</summary>

この図は、計算点を総血液量の順につないだ折れ線である。隣り合う点を結ぶ線分の傾きは、有限の区間での圧と容積の変化を表す。数学例の局所微分dP/dVや、十分に弛緩した組織の材料則と対応づけるには、測る時点と区間をそろえる必要がある。最大容積の点を使っても、心室の活性化前の圧を測ったことにはならない。本稿では計算点と線の位置を比較し、計算していない局所微分の値は付け加えない。

</details>

予想と照らし合わせると、同程度の容積で圧が高いという向きは、振幅を変えた数学例と一致する。前半の二つの容量負荷の比較で、係数1.33の心室が容積の増加は小さく左房圧の上昇は大きかったことも、同じ向きの結果である。一方、同じ容積や同じ圧での傾きについては、この計算から局所微分を求めていないので、数学例と一致したかどうかは判断しない。

図の計算点は、受動係数ごとに総血液量を段階的に変えた負荷系列から取り出したものである。次の実験では、その負荷系列のPV loopとStarling曲線を、二つの受動係数で並べて確かめられる。上の図で結果の要点を先に読み、系列そのものは必要に応じてここで確認する。

## インタラクティブ・シミュレーション: 2つの受動係数で、負荷系列を比べる

- Scenarios: 2
- Graphs: 2
- Outputs: 4
- Controls: 0
- Output: 平均左房圧
- Output: 平均左房圧
- Output: 有効CO
- Output: 有効CO

## 容量負荷の論文は、何の傾きを測ったのか

Fujimotoらは、健常者とHFpEF患者に生理食塩水を急速に投与し、充満圧がどう応答するかを測定した。研究全体の健常者60人では、平均PCWPは約1 Lの投与後に10±2から16±3 mmHgへ上昇した。健常な心臓でも、容量を加えれば充満圧は上がる。臨床的な問いは、圧の高さそのものではなく、容量を加えたときの圧の上がり方がHFpEFで違うかどうかである。[6)](#article-reference-fujimoto2013)

HFpEF患者11人と比べる解析では、健常者60人のうち47人を、HFpEF群の男女比に近づけるように無作為に選んでいる。年齢をそろえた対照ではない。[図3](#article-figure-fig02-fujimoto-dose-pressure-table)は、この比較（原著Table 3）の数値を、50歳未満の健常20人、50歳以上の健常27人、HFpEF 11人に分けて示したものである。見るのは、各行の投与量と、投与前後のPCWPの組である。健常の2群にはおよそ1 Lが投与されたが、HFpEF群には安全上の理由で少ない量が投与され、投与前のPCWPも健常の2群より高かった。三つの行は、同じ量を同じ出発点から入れた比較ではない。原著は、体表面積で補正した投与量に対するPCWPの上昇がHFpEFで健常対照より急だったと報告しているが、これは投与量の違いを考慮した解析の結果であり、表の前後差を並べるだけでは得られない。[6)](#article-reference-fujimoto2013)

<a id="article-figure-fig02-fujimoto-dose-pressure-table"></a>
**図3：投与量が異なる容量負荷を、同じ1 L負荷として読まない**

![3群の表。50歳未満の健常20人は生食0.95±0.17 LでPCWP10±2から16±2 mmHg。50歳以上の健常27人は0.97±0.20 Lで9±2から17±2。HFpEF11人は0.55±0.23 Lで14±4から20±4。値は平均±SDで、各群の投与量は異なる。](<https://hidoxfvibxkboksemhdv.supabase.co/storage/v1/object/public/article-images/3fe81774-76b8-45bc-a7eb-683e2fa19ea2/c27a2c07-218f-436d-88ff-168a1efb9f81.png>)

Fujimotoらの原著Table 3（Experiment II）の数値を独自の表にした。各値は平均±SD。健常対照47人は、研究全体の健常60人からHFpEF群の男女比に近づけるため無作為に選ばれた。患者群との年齢マッチではない。NS1は初回の生理食塩水負荷後を指し、PCWPは投与直後に測定された。投与速度は約100–200 mL/minで、HFpEFでは安全上投与量を減らしていた。NS1は共通の投与量を意味せず、この表から左室のdP/dVを算出することはできない。[6)](#article-reference-fujimoto2013)

Fujimoto N et al. Hemodynamic Responses to Rapid Saline Loading: The Impact of Age, Sex, and Heart Failure. Circulation. 2013;127:55–62, Table 3. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.112.111302. 掲載数値に基づく本稿の独自作表。

表の量を本実験と対応づけるときも、三つの量を区別する。生食の投与量、左室に実際に入った容量、本実験で設定した総血液量は、互いに別の量である。投与した容量は心室以外にも分布するので、PCWPの上昇幅をそのまま心室のdP/dVと読むことはできない。原著の圧はPCWPで、本実験で読んだ平均左房圧とも測定部位と定義が異なる。本実験で左室容積と心拍出量を合わせて追ったのは、加えた血液がどこに収まり、その結果どの圧が上がったのかを考えるためである。問いの形は似ているが、本実験は原著の結果を再現したかどうかを検証したものではない。[6)](#article-reference-fujimoto2013)

## 圧が下がったとき、何が改善したのか

「心室が硬い」と言うときは、どの曲線の、どの圧または容積での量を指しているかを添えると、意味がはっきりする。充満圧が下がることには臨床的な意味があるが、その理由が血液量の減少、血液の分布の変化、外圧の変化、心筋材料の変化のどれなのかは、圧の一点だけでは分からない。容積と拍出量がどう変わったか、同じ容積や同じ圧で比べたとき圧容積関係はどうなるかを重ねると、「圧の改善」と「材料の改善」を混同せずに評価できる。

患者群も一様ではない。Abramovらの非侵襲的PV推定では、HFpEF患者の中で、糖尿病や腎機能障害が、より大きなventricular capacitanceと関連していた。HFpEFという診断名から曲線の位置を一つに決めず、その患者の容積、負荷条件、測定の仮定を確認する必要がある。[7)](#article-reference-abramov2011)

[拡張能と弛緩｜記事と実験のガイド](/ja/articles/diastolic-function-relaxation-guide)
連載全8回の一覧と、実験の読み方。

[次へ｜弛緩指標は、心筋だけを測っているのか](/ja/articles/relaxation-indices-loading-conditions)
第3回へ進む。

## 注釈

[^note-1]: **腔内圧と経壁圧**
    LVEDPを壁が膨らむ条件として読むときは、心室の外から加わる圧も考える。心室内の圧が高くても、外圧が同じだけ高ければ、壁の内外の圧差は増えない。本アプリでは、圧波形の腔内圧とPVの経壁圧を区別して表示している。外的拘束の実験は第6回で詳しく扱う。
    
    $$
    P_{\mathrm{cavity}}=P_{\mathrm{tm}}+P_{\mathrm{external}}
    $$
    

## 文献

<a id="article-reference-granzier1995"></a>
1. [Passive tension in cardiac muscle: contribution of collagen, titin, microtubules, and intermediate filaments (1995)](<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7756523/>) 心筋の受動張力に対するtitinとcollagenの寄与を筋節長ごとに検討。 DOI: 10.1016/S0006-3495(95)80278-X。

<a id="article-reference-borbely2005"></a>
2. [Cardiomyocyte stiffness in diastolic heart failure (2005)](<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15699264/>) 拡張不全患者の心筋細胞で、受動張力の増加を検討。 DOI: 10.1161/01.CIR.0000155257.33485.6D。

<a id="article-reference-zile2015"></a>
3. [Myocardial stiffness in patients with heart failure and a preserved ejection fraction: contributions of collagen and titin (2015)](<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25637629/>) HFpEF患者の生検組織で、collagenとtitinに由来する硬さを評価。 DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.114.013215。

<a id="article-reference-nikolic1988"></a>
4. [Passive properties of canine left ventricle: diastolic stiffness and restoring forces (1988)](<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3383365/>) 流入を制御し、十分に弛緩した心室の受動圧容積関係と通常の充満軌道を区別。 DOI: 10.1161/01.RES.62.6.1210。

<a id="article-reference-klotz2006"></a>
5. [Single-beat estimation of end-diastolic pressure-volume relationship: a novel method with potential for noninvasive application (2006)](<https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/ajpheart.01240.2005>) 正規化した曲線形状を用いて、単一拍の圧容積点からEDPVRを推定する方法。 DOI: 10.1152/ajpheart.01240.2005。

<a id="article-reference-fujimoto2013"></a>
6. [Fujimoto N, et al. Hemodynamic responses to rapid saline loading: the impact of age, sex, and heart failure. Circulation. 2013;127:55–62.](<https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.112.111302>) 急速生食負荷に対するPCWP・RAPの応答を、健常者とHFpEF患者で比較。 DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.112.111302。

<a id="article-reference-abramov2011"></a>
7. [Abramov D, et al. The impact of extra cardiac comorbidities on pressure volume relations in heart failure and preserved ejection fraction. J Card Fail. 2011;17:547–555.](<https://doi.org/10.1016/j.cardfail.2011.03.010>) HFpEFの併存疾患と、非侵襲的PV推定によるventricular capacitanceとの関連。 DOI: 10.1016/j.cardfail.2011.03.010。
