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title: "心膜の拘束を強めると、左室の圧は上がるのか"
locale: "ja"
public_slug: "pericardial-restraint-ventricular-pressure"
tags: ["心膜拘束", "経壁圧", "充満圧", "左右心相互作用", "HFpEF"]
published_at: "2026-09-23T05:43:18.992572Z"
updated_at: "2026-09-23T05:43:18.992572Z"
article_content_id: "0fcb48d1-3cf1-4edc-b083-89b561d078e1"
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# 心膜の拘束を強めると、左室の圧は上がるのか

左室拡張末期圧LVEDPが高い。心筋が硬く、血液を受け入れにくいのだろうか。心室の内側の圧だけを見ていると、もう一つの可能性が抜け落ちる。心室を外側から押す圧が高ければ、心筋の性質が同じでも、高い内圧が記録され得る。では、心膜の拘束を強めれば、左室の圧はその分だけ上がるのだろうか。

この回では、カテーテルで測る腔内圧と、壁の内外にかかる圧差である経壁圧を分けて考える。実験では心膜の拘束と総血液量を別々に変え、左室だけでなく、右房・左房の圧と拍出量まで同じ循環の中で追う。外圧が上がったのに左室の腔内圧が下がり得る理由を、圧の内訳と充満量の変化から説明できること、そしてPCWP−RAPのような臨床の代理指標がどの条件で経壁圧に近づくかを判断できることが、この回の目標である。比べるのは各条件の周期定常状態である。

## 壁を広げるのは、内側と外側の圧差

心室の腔内圧をP\_cavity、心室を外から囲む圧をP\_externalとすると、両者の差が経壁圧P\_tmである。壁を内側から押し広げるのは、この差である。例えば内圧の上昇と外圧の上昇が同じ大きさなら、経壁圧は変わらず、壁にかかる内外の圧差は増えない。内圧だけの図から壁にかかる圧差を判断すると、外圧の分だけ読み違える。

$$
P_{\mathrm{tm}}=P_{\mathrm{cavity}}-P_{\mathrm{external}}
$$

ただし、経壁圧も心筋線維の伸びそのものではない。圧を支える壁の厚さ・形状・材料特性や、拡張中に残る能動張力が関係する。前負荷を考えるときは、圧の基準をそろえたうえで、容積や壁の伸展も合わせて読む。

## 肥満HFpEFで観察された、圧のずれ

Obokataらは、肥満HFpEF、非肥満HFpEF、対照を侵襲的運動負荷検査と心エコーで比較した。肥満HFpEFでは総心容積や右房圧が大きく、推定した左室経壁圧が同程度でも、より高いPCWPが対応していた。外的拘束の寄与と整合する所見であり、高い充満圧を左室材料の硬さだけに帰属させない根拠になる。[1)](#article-reference-ref-obokata2017)

この研究は、PCWP−RAPを左室経壁圧の推定値として用いた。右房圧を心室の外圧の代理とする考え方であり、代理が成り立つには条件がある[^note-1]。シミュレーションでは心膜圧と胸膜圧を直接出力できるので、代理指標とモデル内の実際の外圧を分けて調べられる。

## 右室の負荷は、左室の充満条件にもなる

左右の心室は中隔を共有し、同じ心膜の中にある。右室側の圧や容積が変わると、左室が占められる空間と、中隔にかかる力の釣り合いも変わる。このため、左室の受動材料が変わらなくても、左室の充満は変化し得る。

[図1](#article-figure-fig-diastolic-interaction)は、HFpEF患者の安静時と運動時を比較した原著の例である。見るのは拡張末期の中隔の形で、運動時の画像では中隔が扁平になり、左室断面がD字に近づいている。右室側の条件が、左室の形そのものを変えている。ここでは「左室の外側と右側も充満の条件になる」という臨床の観察として読む。[2)](#article-reference-ref-parasuraman2019)

<a id="article-figure-fig-diastolic-interaction"></a>
**図1：拡張末期の中隔形状も、左右心の相互作用を映す**

![HFpEF患者の造影心エコー短軸像。Aは安静時、Bは同じ患者の運動時。運動時には心室中隔が扁平となり左室断面がD字に近づく。CとDは中隔の曲率半径と左室腔半径の比による形状評価の模式図。](<https://cdn.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/blobs/a027/6509705/e6325c939c6f/JAH3-8-e010114-g001.jpg>)

Parasuramanら（2019）Fig.1。A/B：同一HFpEF患者の安静時／運動時の拡張末期短軸像。C/D：中隔の曲率半径rと左室腔半径rᵢを用いるnormalized radius of curvatureの説明。原著全体はHFpEF30例、高血圧対照17例、健常17例を比較した観察研究。この0D実験は画像・曲率指標や運動負荷全体を再現するものではない。

© 2019 The Authors. Parasuraman et al., Journal of the American Heart Association 8:e010114, Fig.1. doi:10.1161/JAHA.118.010114。原図は改変せず掲載。日本語の図題・説明・代替テキストは本稿による。 · [CC BY 4.0](<https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/>)

## 心筋を変えずに、心膜と血液量を変える

実験では、心膜の容量尺度（1.00／0.85）と総血液量（4935／5500 mL）を組み合わせる。容量尺度を小さくすると、同じ総心容積に対して心膜の拘束が強くなる。心室の受動係数、能動張力、心拍数は固定し、圧反射や体液量の自動調整は加えない。中心となる比較は、総血液量を5500 mLに固定して心膜の容量尺度1.00と0.85を比べる2条件である。4935 mLで同じ比較をした結果は、主な結果を読んだ後に補足として確かめる。なお、モデルがLVEDPとして示す値は僧帽弁閉鎖時の左室腔内圧であり、臨床で心室の昇圧前に読む拡張末期圧と同じ時点とは限らない。以下では、これを「閉鎖時の腔内圧」と呼ぶ。

PVグラフの縦軸は経壁圧、圧波形のLVP/LAPは腔内圧である。この実験では条件によって外圧が変わるので、二つの図は同じ変化を別の基準で映すことになる。モデルの外圧は、胸膜圧と心膜の超過圧から成る[^note-2]。

拘束を強めれば外圧が上がり、その分だけ左室の腔内圧も上がる、と予想するのは自然である。ただ、閉じた循環では、外圧が上がると充満量そのものも変わり得る。圧の足し算と容積の変化を同時に追うことが、この実験の問いになる。総血液量5500 mLのもとで、閉鎖時の腔内圧、同時点の経壁圧と外圧、左室拡張末期容積LVEDV、心拍出量COを比べる。

## インタラクティブ・シミュレーション: 血液量5500 mL：心膜拘束を強める

- Scenarios: 2
- Graphs: 3
- Outputs: 12
- Controls: 0
- Output: MV閉鎖時LV腔内圧
- Output: MV閉鎖時LV腔内圧
- Output: MV閉鎖時LV経壁圧
- Output: MV閉鎖時LV経壁圧
- Output: 有効CO
- Output: 有効CO
- Output: 平均左房圧
- Output: 平均左房圧
- Output: 平均右房圧
- Output: 平均右房圧
- Output: MV閉鎖時LV容積
- Output: MV閉鎖時LV容積

## 外圧が上がっても、閉鎖時の腔内圧は下がった

総血液量5500 mLで心膜の容量尺度を1.00から0.85へ下げると、閉鎖時の腔内圧は20.17から17.82 mmHgへ下がった。LVEDVは167.8から153.1 mLへ、COは6.42から5.90 L/minへ減った。一方、右房圧RAPは4.57から5.73 mmHgへ上がった。拘束を強めたのに、左室の腔内圧は上がらず、むしろ下がった。圧が下がっても、前方への拍出は増えていない。

圧の内訳を見ると、低下の輪郭が見えてくる。5500 mLの閉鎖時点で、外圧は0.06から4.03 mmHgへ上がったが、経壁圧は20.10から13.79 mmHgへ、それ以上に下がった。変更後は13.79＋4.03＝17.82 mmHgで、腔内圧は経壁圧と外圧の和になっている。同時に、LVEDVは14.7 mL小さくなり、平均左房圧は12.72から12.20 mmHgとほとんど変わらなかった。

この観察を解釈するために、壁の形や材料、残る能動張力も同じだと仮定してみる。その仮定のもとでは、外圧が上がった分を補うだけ腔内圧が高くならなければ、左室は同じ容積を保てない。今回の容積の低下と経壁圧の低下は、拘束によって充満が制限されたという見方と整合する。ただし、この内訳は恒等式による分解であり、低下の原因を一つに確定するものではない。比べている左房圧は一拍の平均、左室圧は条件によって時刻の異なる閉鎖時点の値である。これらだけでは、充満中の同じ時刻の圧較差も、流入が減った原因も、各経路の寄与も確定できない。

閉鎖の時点にも注意が要る。5500 mLでは、僧帽弁が閉じたのは容量尺度1.00で心室Ca入力の開始から約31 ms後、0.85ではその開始時点付近だった。つまり20.17 mmHgには、新たな収縮に伴う圧上昇が含まれ得る。同じ計算の波形をCa入力の開始時点にそろえて比べ直すと、腔内圧は18.82から17.82 mmHgへ下がり、低下の向きは残るが、差は閉鎖時の比較より小さい。Ca入力の開始時点も臨床のLVEDPを測る時点の代わりではないので、この比較は、低下の大きさが読む時点に依存することを示すものとして読む。

では、心臓全体の容積が小さい条件でも同じ傾向が見られるだろうか。総血液量4935 mLで同じ変更を行うと、LVEDVは143.7から141.8 mL、COは5.61から5.54 L/minで、わずかに減る向きは5500 mLと同じだった。しかし閉鎖時の腔内圧は10.91から11.15 mmHgとわずかに上がり、5500 mLで見た低下は現れなかった。拘束を強めた影響は、心臓全体の容積が大きい条件ではっきり現れた。この補足の比較は、次の実験で確かめられる。

## インタラクティブ・シミュレーション: 血液量4935 mLでは、同じ拘束変更がどう働くか

- Scenarios: 2
- Graphs: 2
- Outputs: 12
- Controls: 0
- Output: MV閉鎖時LV腔内圧
- Output: MV閉鎖時LV腔内圧
- Output: MV閉鎖時LV経壁圧
- Output: MV閉鎖時LV経壁圧
- Output: 有効CO
- Output: 有効CO
- Output: 平均左房圧
- Output: 平均左房圧
- Output: 平均右房圧
- Output: 平均右房圧
- Output: MV閉鎖時LV容積
- Output: MV閉鎖時LV容積

## 圧が下がったとき、左室が空になったとは限らない

臨床でも、心臓へ戻る血液の条件と、右心・心膜からの制限は、左室の充満に対して競合し得る。Athertonらの慢性心不全の観察では、下半身陰圧で右室拡張末期容積が減る間に、左室拡張末期容積が増えた患者がいた。二つの変化のどちらが勝つかは、圧だけでは決められない。[3)](#article-reference-ref-atherton1997)

冒頭の問いに戻ると、総血液量を固定したこのモデルでは、心膜の拘束を強めても左室の腔内圧が上がるとは限らなかった。高容量の条件では外圧が上がったが、左室はより小さい容積で充満を終え、閉鎖時の腔内圧はむしろ下がり、拍出量も減った。臨床で高いLVEDPを見たときは、まず何に対する圧かを確かめ、そのうえで左室の容積、右心の状態、外圧、拍出量を合わせる。心室の硬さが主な説明になる場合も、外的拘束が大きい場合も、この順序なら同じ枠組みで考えられる。

[拡張能と弛緩｜記事と実験のガイド](/ja/articles/diastolic-function-relaxation-guide)
連載全8回の一覧と、実験の読み方。

[次へ｜拡張時間のために、心拍数は低いほどよいのか](/ja/articles/heart-rate-diastolic-filling-time)
第7回へ進む。

## 注釈

[^note-1]: **PCWP−RAPと経壁圧が一致する条件**
    共通の外圧を持つモデルでは、同じ時刻のLV腔内圧−RA腔内圧は、LV経壁圧−RA経壁圧に等しい。したがってRAPを外圧と近似するには、RA経壁圧が小さいという仮定が要る。さらに平均LAP−平均RAPと、僧帽弁閉鎖時のLV経壁圧を比べると、心腔と測定時点の違いも加わる。両者の差を、すべて右房経壁圧による誤差として説明することはできない。
    

[^note-2]: **このモデルの心膜と圧の定義**
    心膜は、4心腔の血液容積、心筋壁の体積、設定された心膜内液体量を、共通の袋の占有体積として扱う。左右心は、共通の外圧と中隔の力学を通じて相互作用する。RAPは心膜圧と等しい量としては扱っていない。容量尺度の変更は、収縮性心膜炎の診断や病態全体を再現する設定ではない。
    

## 文献

<a id="article-reference-ref-obokata2017"></a>
1. [Obokata et al. Circulation 2017;136:6–19](<https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5501170/>) doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.116.026807

<a id="article-reference-ref-parasuraman2019"></a>
2. [Parasuraman et al. J Am Heart Assoc 2019;8:e010114](<https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6509705/>) doi:10.1161/JAHA.118.010114

<a id="article-reference-ref-atherton1997"></a>
3. [Atherton et al. Lancet 1997;349:1720–24](<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9193381/>) doi:10.1016/S0140-6736(96)05109-4
