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title: "MRを減らしたらEFが下がるのはなぜか"
locale: "ja"
public_slug: "mitral-regurgitation-repair-ef"
tags: ["僧帽弁逆流", "EF", "後負荷", "収縮性", "PVループ"]
published_at: "2026-09-23T05:48:16.068795Z"
updated_at: "2026-09-23T05:48:16.068795Z"
article_content_id: "c6bbc901-1e7e-4147-881f-861a81c318b1"
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# MRを減らしたらEFが下がるのはなぜか

僧帽弁逆流（MR）を経カテーテル修復などで減らしたあと、EFが下がることがある。心筋が弱ったと考えるべきだろうか。EFは左室から出た血液の割合を表すが、その行き先は区別しない。MRの左室には大動脈と左房という二つの出口があり、左房へ戻った血液もEFの分子に入っている。そのため逆流口が閉じると、心筋の条件が同じでも総EFは下がり、同時に大動脈への前方拍出は増えうる。

本記事では、EFの定義と二つの出口の力学からこの逆説を説明し、臨床研究の非侵襲PV解析を読んだうえで、心筋張力と逆流口を別々に変えた循環モデルで両者の効果を分けて見る。モデルの比較は、各条件で循環が周期定常に達した一拍どうしで行う。逆流口を変えた直後の拍や、処置後の回復過程は扱わない。

## EFの分子には、左房へ戻る血液も入る

拡張末期容積をEDV、収縮末期容積をESVとすると、総一回拍出量はEDV−ESVである。このうち大動脈へ出た量を前方SV、左房へ戻った量を逆流量V\_MRとすると、左室容積が減る区間の収支は次のように書ける。

$$
SV_{\mathrm{total}}=EDV-ESV\simeq SV_{\mathrm{forward}}+V_{\mathrm{MR}},\qquad EF=\frac{SV_{\mathrm{total}}}{EDV}
$$

この収支は、大動脈弁逆流や短絡がなく、収縮中に僧帽弁を通る前方流入を無視できる場合の整理である。逆流量が減れば、前方SVが保たれていても総SVは減りうる。ただしEDVも同時に変わるので、EFがどれだけ動くかは分子と分母を別々に見なければ決まらない。[^note-1]

算術だけで確かめておく。EDVを150 mLに固定し、大動脈へ60 mL、左房へ30 mL出ればEFは60％である。逆流がなくなり、大動脈へ同じ60 mLを送ればEFは40％になる。前方拍出は変わらないのに、EFは20ポイント下がる。患者データでもモデルの計算でもない、定義上の例である。

## 圧の異なる二つの出口

収縮中の左室には、大動脈側と左房側の二つの流出路がある。大動脈への駆出は左室と大動脈の圧差で、左房への逆流は左室と左房の圧差で駆動される。

$$
Q_{\mathrm{Ao}}=f_{\mathrm{Ao}}(P_{\mathrm{LV}}-P_{\mathrm{Ao}}),\qquad Q_{\mathrm{MR}}=f_{\mathrm{MR}}(P_{\mathrm{LV}}-P_{\mathrm{LA}})
$$

Qは流量、Pは各部位の圧、fは開口面積と弁の開閉状態を含む圧–流量関係である。二つの流路は左室に対して並列だが、下流の圧が大きく違う。左室圧が左房圧を上回り逆流口が開いていれば、大動脈弁が開く前から左室容積は減り始める。そのためPVループでは、等容収縮に相当する縦の辺が垂直でなくなる。

逆流口を閉じると、この低い圧の出口がなくなる。左室は大動脈圧を超えるまで容積を減らせず、駆出はすべて高い圧に向かう。心筋の能動張力の設定が同じでも、どの圧でどれだけ容積が減るかの組合せが変わり、左室は以前ほど小さな容積まで縮まなくなりうる。

とはいえ、左房は抵抗のない逃げ道ではない。逆流量は逆流口の大きさと左房圧に制約され、左房圧は左房のコンプライアンスにも左右される。左房へ戻った血液は次の拡張期に左室へ再び流入するので、左房・肺静脈の圧と左室の充満にも影響する。低い圧へ駆出できることは、循環全体にとって得であることを意味しない。

## Eaが上がったとき、何が増えたのか

有効動脈エラスタンスEaは、収縮末期圧P\_esを一回拍出量で割った値である。MRでは分母に総SVと前方SVのどちらを使うかで、値も意味も変わる。HashimotoらのTEER研究は総SVを用いた。[1)](#article-reference-mr-ref-hashimoto)

$$
E_{a,\mathrm{total}}=\frac{P_{es}}{SV_{\mathrm{total}}},\qquad E_{a,\mathrm{forward}}=\frac{P_{es}}{SV_{\mathrm{forward}}}
$$

圧が同じでも総SVが減れば、Ea,totalは上がる。Eaは血管壁の物性でもSVRでもなく、選んだ圧と拍出量を結ぶ一拍の指標だからである。MRのある左室で総SVを使えば、左房という低圧の出口もEaの値に含まれる。したがって修復後のEa,total上昇は、末梢血管が収縮しなくても、低圧の出口が閉じただけで起こりうる。

さらに、EFとEa,totalは同じ総SVを含む。総SVが減るだけでEFは下がり、Ea,totalは上がる方向へ動くので、両者の相関は後負荷の上昇がEF低下の原因であることの証明にならない。因果を分けるには、前方流量、圧、容積、心筋の条件を別々に見る必要がある。後半のモデルでは、逆流口だけを変える比較と心筋張力だけを変える比較を分けて、この切り分けを行う。

## TEER後、推定Eesは下がったか

HashimotoらはTEERを受けた49例を後ろ向きに解析した。18例でEFが5ポイント以上低下したが、49例全体のEFの変化は有意ではなかった。一方、全体では前方一回拍出量係数とEaが増加し、非侵襲的に推定したEesに有意な変化はなかった。[図1](#article-figure-mr-primary-figure)に主要な結果を示す。EF低下をそのまま収縮性低下と読む解釈を見直す根拠になるが、有意差がないことは心筋機能の不変を証明しない。[1)](#article-reference-mr-ref-hashimoto)

<a id="article-figure-mr-primary-figure"></a>
**図1：TEER前後のEF・前方拍出・推定Ees**

![TEER前後で総EF57から54%、前方SV係数30から35 mL/m²、推定Ees2.04から2.19 mmHg/mL。群平均と標準偏差。](<https://hidoxfvibxkboksemhdv.supabase.co/storage/v1/object/public/article-images/3fe81774-76b8-45bc-a7eb-683e2fa19ea2/903afead-054c-479a-a777-df5a09c525de.png>)

全49例の平均±SD。EFとEesの変化は非有意、前方SV係数は増加した。EF低下18例の群別解析と混同しない。術前後の心エコーは各3日以内、術後は中央値1日。Eesは非侵襲的single-beat推定。原著Table 2。[1)](#article-reference-mr-ref-hashimoto)

Hashimoto et al. Echocardiography (2025), Table 2. DOI:10.1111/echo.70095。数値から独自に作図。 · 原著の報告値・所見に基づく独自作図（原図転載なし）

Lavallらの46例でも、修復後に総EFは低下したが、推定Eesと前方COは維持され、左室容積、一回仕事量、圧容積面積（PVA）は減少した。左室が扱う総量や仕事が減ることと、体循環へ送る量が減ることは別の変化である。[2)](#article-reference-mr-ref-lavall)

二つの研究はいずれも血圧と心エコーによる非侵襲的PV解析である。HashimotoらのFig. 2Aは、カテーテルで連続記録したループではなく、single-beat推定と容積値から組み立てた簡略化PV図である。モデルの一拍波形と比べるときは、圧・容積・Eesの測定法の違いを踏まえる。

## モデルで出口と心筋を分けて動かす

まず、心筋の設定を同じに保ち、僧帽弁閉鎖中に残る逆流口だけを0.30 cm²から0へ変えた二条件を比べる。左室自由壁と中隔の能動張力の基準値は通常の70％に設定した。心拍数、総血液量、血管抵抗、他の弁の設定は共通で、容積・圧・流量は循環の釣り合いから決まる。[^note-2]

## インタラクティブ・シミュレーション: 心筋の設定を保ち、逆流口を閉じる

総EFと前方SVを比較し、左房圧も確かめる。圧波形はグラフの切替で表示できる。

- Scenarios: 2
- Graphs: 2
- Outputs: 6
- Controls: 0
- Output: 総EF
- Output: 総EF
- Output: 前方SV
- Output: 前方SV
- Output: 平均左房圧
- Output: 平均左房圧

低張力の心室で逆流口を閉じると、総EFは59％から48％へ下がった。一方、大動脈への前方SVは65 mLから77 mLへ、心拍出量は4.5 L/minから5.4 L/minへ増えた。心筋の設定を変えないまま、EFの低下と前方拍出の増加が同時に起きた。[^note-3]次は逆流口を同じに保ち、心筋張力の基準値だけを変える。

## インタラクティブ・シミュレーション: 逆流口を保ち、心筋張力の基準値を上げる

逆流口0.30 cm²を共通にする。心筋側を変えたときのEFと前方SVを見る。

- Scenarios: 2
- Graphs: 1
- Outputs: 4
- Controls: 0
- Output: 総EF
- Output: 総EF
- Output: 前方SV
- Output: 前方SV

逆流ありの条件で張力の基準値を70％から100％へ上げると、総EFは59％から66％へ、前方SVは65 mLから72 mLへ、ともに増えた。逆流口を閉じた場合のような、EFと前方SVの逆向きの変化ではなかった。

本実験の前方拍出増加はHashimotoらの全体結果と同じ向きだが、Lavallらでは前方COは維持されていた。両研究と共通する問いは、総EFの低下を心筋の悪化だけで説明できるか、という点にある。なお本実験は患者にフィットしたものではなく、臨床のsingle-beat EesやEaもこの比較では求めていない。

## 心筋への入力と、実際の張力を分ける

本実験で固定したのは、心筋の能動張力を決める入力である。実際に発生する張力は、筋の長さや短縮状態にも依存する。Eesはこの入力と同じものではなく、心室の形状、負荷の範囲、収縮末期の定め方にも左右される心室レベルの指標である。入力を固定しても、臨床のsingle-beat Eesが変わらないことまでは保証されない。

MRのある心臓では、「何mL出たか」に「どこへ出たか」を加えて読む。今回の条件では、出口の変化と心筋の変化でEFと前方SVの動く向きが異なった。PV、前方流量、左房圧を合わせて読むことが、総EFの低下を逆流、充満、心筋の変化に分けて考える手がかりになる。

[EFが上がれば収縮性も上がったのか――筋節からPVへ](/ja/articles/ef-contractility-sarcomere-pv)
前の記事 — 収縮性を考える

[狭い弁の先の血管負荷は拍出を変えるか――ASと低収縮性](/ja/articles/aortic-stenosis-contractility-vascular-load)
次の記事 — 収縮性を考える

## 注釈

[^note-1]: **容積と流量の定義**
    本文前半のEDV−ESVは二つの時点間の容積差であり、弁の前方量・逆流量は指定した区間の流量積分である。本実験の総SV・EFは一拍の最大・最小左室容積から計算した値で、弁閉鎖のタイミングで定義するEDV・ESVとは区別する。最大・最小容積の差と一拍全体の弁流量積分には、積分区間の違いによる小さな差がありうる。COは大動脈弁の正味流量であり、大動脈弁逆流があれば前方量とは異なる。
    

[^note-2]: **実験条件とモデルの範囲**
    四条件に共通の設定は、心拍数70 bpm、総血液量4,935 mL、全身血管抵抗はモデル内の参照値の1.04倍、僧帽弁の最大前方開口面積5.5 cm²である。心筋張力は左室自由壁と中隔の能動張力に掛ける倍率で、基準張力を1.00、低張力を0.70とした。逆流口は僧帽弁が閉じている間に残す開口面積である。
    
    逆流口を小さくする操作は、TEERの全過程を表さない。実際の処置による僧帽弁前方開口面積の減少や圧較差、麻酔・薬剤、長期の心室形状変化を一括して再現するものではない。
    

[^note-3]: **容積・圧・基準張力条件の内訳**
    内訳を見ると、総SVは104 mLから77 mLへ減り、39 mLあった逆流量が0になった。最小容積は72 mLから83 mLへ増え、最大容積は176 mLから161 mLへ減った。低圧の出口を失って左室が小さな容積まで縮まなくなり、逆流で増えていた充満も減ったと読める。EFの分子と分母がともに動いた結果である。
    
    平均左房圧は20 mmHgから10 mmHgへ下がり、平均大動脈圧は77 mmHgから90 mmHgへ上がった。血管抵抗の設定が同じでも、前方拍出と大動脈圧はともに上がる。ただし平均大動脈圧は収縮末期圧Pesとは異なる。総SVの減少はEa,totalを上げる方向に働くが、実際のEaの変化はPesも求めて判断する必要がある。
    
    基準張力の心室でも同じ向きの変化が起きた。逆流口を閉じると総EFは66％から56％へ下がり、前方SVは72 mLから80 mLへ増え、平均左房圧は16 mmHgから8 mmHgへ下がった。
    
    そのためEFだけで四条件を並べると、判断を誤りうる。低張力で逆流のある条件のEF（59％）は、基準張力で逆流のない条件のEF（56％）より高い。しかし前方SVは65 mLと80 mLで、順序が逆になる。
    
    低張力の心室で逆流口を閉じると、一回仕事量は1001 mJから970 mJへわずかに減った。総駆出量は減り、前方拍出は増えている。PVループの面積は左室が行った機械的仕事を表すが、MRのある左室では、その一部が左房への駆出に使われている。仕事量の変化から、酸素消費や臨床転帰までは決められない。
    
    実験の一回仕事量は、経壁圧を用いた−∮Ptm dVをmJへ換算した出力である。臨床の内腔圧や非侵襲推定によるPV面積と比べるときは定義をそろえる。本実験はPVAや心筋酸素消費を評価していない。
    

## 文献

<a id="article-reference-mr-ref-hashimoto"></a>
1. [Hashimoto K, et al. Increased Afterload in Patients With Acute Reduction in Left Ventricular Ejection Fraction Following Mitral Valve Transcatheter Edge-to-Edge Repair. Echocardiography. 2025;42:e70095.](<https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11849581/>) DOI:10.1111/echo.70095。49例、非侵襲single-beat推定。Fig. 2Aは簡略化した推定PV。

<a id="article-reference-mr-ref-lavall"></a>
2. [Lavall D, et al. Early Hemodynamic Improvement after Percutaneous Mitral Valve Repair Evaluated by Noninvasive Pressure-Volume Analysis. J Am Soc Echocardiogr. 2016;29:888–898.](<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27372560/>) DOI:10.1016/j.echo.2016.05.012。46例、非侵襲PV解析。原著抄録で血行動態結果を確認。
