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title: "収縮性を高めれば患者は良くなるのか――拍出・仕事量・転帰"
locale: "ja"
public_slug: "contractility-output-work-outcomes"
tags: ["心不全治療", "収縮性", "心拍出量", "一回仕事量", "臨床試験"]
published_at: "2026-09-23T05:48:31.839714Z"
updated_at: "2026-09-23T05:48:31.839714Z"
article_content_id: "dcb9dc50-8356-406f-9de1-4ef644e45369"
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# 収縮性を高めれば患者は良くなるのか――拍出・仕事量・転帰

強心作用のある治療で心拍出量（CO）が増え、EFも上がった。患者は良くなると期待してよいだろうか。心不全治療の臨床試験は、この期待が外れうることを繰り返し示してきた。本稿では、収縮性を変える介入を三つの段階で評価する。どれだけ送り出したか（拍出量）、どの圧に向かってどれだけの仕事をしたか（圧と仕事量）、そして患者に何が起きたか（症状、入院、死亡）である。前の二つはモデルで機序として関係づけられるが、三つ目には症状や転帰を測った臨床研究による検証が必要である。

本稿では、シリーズ第1回で用いた条件から、血管抵抗だけを変える組と心筋張力の基準値だけを変える組を選び、周期定常の一拍を比べる。特定の薬剤、心筋酸素消費、長期予後を再現する実験ではない。[^note-1]

## 一拍量は流量の時間積分

心筋の「強さ」には、張力の大きさ、張力を立ち上げる速さ、張力を保つ時間という異なる性質がある。Ca濃度、Ca感受性、クロスブリッジの状態遷移への作用は、これらを同じ比率で変えるとは限らない。これらの性質は、駆出中の流量の大きさと、その流量が続く時間を通して一拍量に反映される。

大動脈弁を順方向に通過する流量をQAoV(t)とすると、一拍の前方拍出量は、一周期Tにわたる正の流量の時間積分になる。

$$
SV_{\mathrm{forward}}=\int_0^T\max\{Q_{\mathrm{AoV}}(t),0\}\,dt,\qquad T=\frac{60}{HR}
$$

QをmL/s、Tを秒、HRを拍/分とすれば、SVの単位はmL/拍になる。流量の高さと波形の形を保ったまま駆出時間が延びれば、積分値は大きくなる。ただし実際には流量波形や圧較差、弁の開口も変わるため、駆出時間の延長だけからSVの増加は決められない。PVループは一拍の圧と容積の経路を示すが、その経路を通る速さは示さないので、流量や圧の波形と合わせて読む。[^note-2]

この区別は臨床試験でも意味をもつ。COSMIC-HFは慢性HFrEF 448例でomecamtiv mecarbilを検討し、薬物動態に基づいて用量を調整した群では、20週時点でプラセボと比べて駆出時間が約25 ms長く、一回拍出量が約3.6 mL多かった。駆出時間とSVは別々に測った量であり、時間の延長と拍出量の増加が同じ向きに現れたことを示している。ここで示したのは心機能指標の変化であり、死亡減少の証拠ではない。[1)](#article-reference-ref-cosmic)

## CO増加の道筋によって、仕事量は異なる

COが同じように増えるとき、心室の仕事量も同じだろうか。まず心筋張力の基準値を70％に保ち、血管抵抗を高から低へ変える。次に高抵抗を保ち、張力の基準値を70％から100％へ上げる。心拍数と総血液量は共通である。PVの幅と面積を見ながら、COと一拍仕事量が同じ向きに動くかを比べてほしい。

## インタラクティブ・シミュレーション: 血管抵抗を下げると、COと仕事量はどう動くか

低張力を共通にした比較。PVの高さと幅を合わせて読む。

- Scenarios: 2
- Graphs: 1
- Outputs: 4
- Controls: 0
- Output: 正味CO
- Output: 正味CO
- Output: 一拍仕事量
- Output: 一拍仕事量

低張力のまま血管抵抗を下げると、COは5.26から5.60 L/minへ増えた。一方、平均大動脈圧は100.9から74.5 mmHgへ、一拍仕事量は1,043から844 mJへ減った。この条件では、多く送り出すことと一拍の機械的仕事の減少が両立した。

## インタラクティブ・シミュレーション: 心筋張力の基準値を上げると、COと仕事量はどう動くか

高抵抗を共通にした比較。先の比較と同じ条件から出発する。

- Scenarios: 2
- Graphs: 1
- Outputs: 4
- Controls: 0
- Output: 正味CO
- Output: 正味CO
- Output: 一拍仕事量
- Output: 一拍仕事量

高抵抗のまま張力の基準値を上げた組でも、COは5.26から5.50 L/minへ増えた。しかし平均大動脈圧は100.9から105.4 mmHgへ、一拍仕事量は1,043から1,184 mJへ増えた。COが増える点は同じでも、圧と仕事量は先の比較と逆向きに動いた。

一拍仕事量SWは、PVループが囲む面積として定義する。一分あたりの外部仕事は、それに心拍数を掛けたものである。

$$
SW=-\oint P_{\mathrm{tm}}\,dV,\qquad \dot W_{\mathrm{ext}}=HR\cdot SW
$$

横軸に容積、縦軸に圧をとると、左室のPVループは反時計回りに進む。そのため∮P dVは負になり、符号を反転したSWが心室の外へ行った仕事を表す。1 mmHg・mLは約0.133 mJである。長方形で近似すれば、面積はSVと、駆出時・充満時の代表的な経壁圧の差の積になる。充満側の仕事を小さいとして省けば、SVと駆出時の圧の積で概算できる。実験のSWはこの近似ではなく、モデルの経壁PV経路を積分した値である。[^note-3]

COは循環が運ぶ血液量を、左房圧は肺静脈側の充満圧の手がかりを、一拍仕事量は心室が一拍に行う機械的な仕事を表す。どれか一つが患者の利益そのものではない。SWは心筋酸素消費量そのものではなく、仕事量が増えたことだけで心筋障害を示したことにもならない。

## 血行動態の改善と転帰は別に検証する

ここまでの指標はモデルで計算できるが、症状、入院、死亡への効果はそこから導けない。PROMISEでは、重症慢性心不全1,088例を経口milrinoneまたはプラセボに割り付け、milrinone群で全死亡が相対的に28%多かった。血行動態を改善する作用をもつ薬剤でも、長期の転帰は逆の方向に動きうることを示した試験である。対象、投与経路、期間の異なる短期の静注治療に、この結果をそのまま移すことはできない。[2)](#article-reference-ref-promise)

COSMIC-HFで駆出時間とSVを増やしたomecamtiv mecarbilについては、HFrEF 8,256例を対象としたGALACTIC-HFで転帰が検証された。心不全イベント（入院または緊急受診）または心血管死の初回発生という複合転帰は減少した（ハザード比0.92、95%信頼区間0.86–0.99）が、心血管死単独では差を示さなかった（1.01、0.92–1.11）。複合転帰の減少を死亡の減少と読み替えないよう、イベント曲線を読むときは、縦軸がどのイベントを数えているかを先に確かめる。[3)](#article-reference-ref-galactic)

複合転帰と死亡単独の違いを[図1](#article-figure-therapy-primary-figure)で比べる。点はハザード比、横線は95％信頼区間である。

<a id="article-figure-therapy-primary-figure"></a>
**図1：GALACTIC-HF：複合転帰と心血管死亡を区別する**

![複合転帰のHR0.92、95%CI0.86から0.99。心血管死単独のHR1.01、95%CI0.92から1.11。](<https://hidoxfvibxkboksemhdv.supabase.co/storage/v1/object/public/article-images/3fe81774-76b8-45bc-a7eb-683e2fa19ea2/1a234be4-75b0-44a1-948b-5f51f510f1a5.png>)

omecamtiv mecarbil対プラセボ。初回心不全イベント（入院・緊急受診）または心血管死のHRは0.92、心血管死単独は1.01。原著Fig. 1A・1Bが扱う評価項目を、本文のHRと95％CIで要約した。イベント発生曲線を描き直した図ではない。[3)](#article-reference-ref-galactic)

Teerlink et al. N Engl J Med (2021). DOI:10.1056/NEJMoa2025797。原著報告値から独自作図。 · 原著の報告値・所見に基づく独自作図（原図転載なし）

反対向きの例もある。CIBIS-IIでは、治療が安定した症候性HFrEF 2,647例で、bisoprolol群の全死亡が少なかった。β刺激を抑える治療の長期的な利益は、ある定常条件で張力を下げたときのCOの変化とは別の問いである。この転帰試験だけから、利益を生んだ個々の機序の寄与を決めることもできない。[4)](#article-reference-ref-cibis)

三つの試験を並べると、強心作用があるかどうかという分類からは転帰の向きを予測できないことが分かる。拍出量や仕事量の変化は、転帰を検証する試験を設計し、その結果の機序を考えるための仮説にはなる。しかし、モデルで得たCOの増加を試験のイベント曲線に置き換えることはできない。

## 収縮を抑えることが治療になる心臓

閉塞性肥大型心筋症（HCM）では、過剰な収縮が左室流出路の閉塞に関わるため、収縮を抑えることが治療の目標になりうる。EXPLORER-HCMは症候性の閉塞性HCM 251例で、心筋ミオシン阻害薬mavacamtenを検討した。運動能とNYHA機能分類を組み合わせた30週の主要評価項目を満たした割合は、mavacamten群37%、プラセボ群17%だった。目指したのはEFを上げることではなく、閉塞を伴う心臓の機能と患者の状態の改善である。[5)](#article-reference-ref-explorer)

一方、非閉塞性HCM 580例を対象としたODYSSEY-HCMでは、48週の最高酸素摂取量（peak VO₂）とKCCQ臨床サマリースコアのいずれの主要評価項目でも、有意な優越性は示されなかった。EF低下と治験薬の中断はmavacamten群で多かった。[6)](#article-reference-ref-odyssey)

二つの試験の違いは、「閉塞の有無だけが結果を分けた」という証明にはならない。試験間では対象、背景治療、期間、主要評価項目が異なるからである。読み取れるのは、同じ薬剤でも、どの機序を標的とし、どの病態で、何を評価項目としたかを切り離して効果を語れないということである。なお、動的な流出路閉塞はこのモデルの固定した弁狭窄では表せないため、この節の内容はシミュレーションでは扱っていない。

## モデルで予測し、試験で確かめる

収縮性をめぐる臨床の問いは、「上げるか、下げるか」では完結しない。どの性質を、どの負荷条件で変え、拍出、充満圧、仕事量のどれを改善したいのかをまず決める。モデルはその機序を分解し、介入が各指標をどの向きへ動かすかを予測するために使う。症状、臓器障害、入院、死亡への効果は、それぞれを測った臨床試験で判断する。

### 確認問題: モデルで左室の能動張力の基準値を上げたらCOが増えた。この結果だけから言えることはどれか？

- 同じ作用を持つ薬剤は患者の死亡を減らす
- この固定条件では、張力の増加がCOを増やす機序がモデル内にある
- COが増えた分だけ心筋酸素消費が減った

<details>
<summary>答えと解説</summary>

**正解:** この固定条件では、張力の増加がCOを増やす機序がモデル内にある

モデル内の条件付き比較である。薬剤の複合作用、心筋酸素消費、患者転帰について述べるには、別のモデルと独立したデータが必要になる。

</details>

[心拍数が増えれば心拍出量も増えるのか――収縮予備能と充満](/ja/articles/heart-rate-output-contractile-reserve)
前の記事 — 収縮性を考える

[EFが上がれば収縮性も上がったのか――筋節からPVへ](/ja/articles/ef-contractility-sarcomere-pv)
シリーズのはじめへ — 収縮性を考える

## 注釈

[^note-1]: **実験の操作が表すこと**
    張力の操作は、シリーズ第1回で説明した筋フィラメントモデルの能動応力の基準値（Tref）に倍率を掛けるもので、条件は0.70倍と基準（1.00）である。Caシグナル、架橋反応速度、薬物動態、血管作用を含む薬剤の効果ではないため、張力の上昇をomecamtiv mecarbilやdobutamineに、低下をbisoprololやmavacamtenに対応させない。
    
    全身血管抵抗の設定（1.25と0.75）は、モデル内部の参照抵抗に対する倍率であり、臨床で計算するSVRの値ではない。本稿は条件間を移る過渡過程を扱わず、各条件の周期定常状態を比べる。
    

[^note-2]: **SVとCOの定義**
    式のSVは大動脈弁を順方向に通過した一拍量であり、逆流があれば正味の一拍量より大きくなる。実験のCOは大動脈弁の正味流量に基づく。今回の四条件では、前方一拍量と、CO・心拍数から求めた正味一拍量は一致した。
    

[^note-3]: **一拍仕事量の圧基準と酸素消費**
    SWはモデルの経壁圧で計算している。心腔内圧で描いた論文のPV面積とは圧の基準が異なるため、値をそのまま比較しない。
    
    本稿はPVAも酸素消費も計算していない。機械的仕事から酸素消費やATP消費を推定するには、別のモデルと検証が必要である。
    

## 文献

<a id="article-reference-ref-cosmic"></a>
1. [Teerlink et al. COSMIC-HF (2016)](<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27914656/>) Lancet. DOI:10.1016/S0140-6736(16)32049-9。Fig. 2A・Bは駆出時間とSVの変化。採択稿：https://eprints.gla.ac.uk/123023/7/123023.pdf

<a id="article-reference-ref-promise"></a>
2. [Packer et al. PROMISE (1991)](<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1944425/>) N Engl J Med. DOI:10.1056/NEJM199111213252103。重症慢性心不全の長期経口milrinone。

<a id="article-reference-ref-galactic"></a>
3. [Teerlink et al. GALACTIC-HF (2021)](<https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2025797>) N Engl J Med. DOI:10.1056/NEJMoa2025797。Fig. 1Aの複合転帰と1Bの心血管死亡を区別。

<a id="article-reference-ref-cibis"></a>
4. [CIBIS-II Investigators (1999)](<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10023943/>) Lancet 353:9–13。症候性HFrEFのbisoprolol無作為試験。

<a id="article-reference-ref-explorer"></a>
5. [Olivotto et al. EXPLORER-HCM (2020)](<https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32871100/>) Lancet. DOI:10.1016/S0140-6736(20)31792-X。閉塞性HCM、251例、30週。

<a id="article-reference-ref-odyssey"></a>
6. [Desai et al. ODYSSEY-HCM (2025)](<https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2505927>) N Engl J Med. DOI:10.1056/NEJMoa2505927。非閉塞性HCM、580例、48週。
